投稿者:ハッカ飴 2001/06/09 (土) 04:32:29 ◆ ▼ ◇ [mirai]さて、まずは彼女に名前を与えてあげなくちゃいけない。
どんな名がいいだろうか?僕はそのことで1日中ずっと悩んでいました。
初恋の人の名前を貰おうか、とも思いましたが、
それは彼女に対してあまりにも失礼だと思いすぐに却下しました。
そう、彼女は僕の叶わなかった恋の身代わりではないのです。
僕は目を閉じ、彼女を初めて見とめた時の事を頭に思い浮かべました。
そう、彼女は雪のように白く、そしてどこか儚げで…食べたいちゃいくらい可愛かった。
「雪…菜…」言葉は自然に僕の口をついで出ました。
「雪菜」…うん、これ以上はないというくらい彼女にピッタリの名前です。
僕はすぐにでも伝えてあげようと急ぎ彼女の待つ部屋に帰りました。
が、いざ彼女を目の前にすると、緊張で思うように口がまわりません。
果して彼女は僕の考えた名前を受け入れてくれるだろうか?もし拒絶されたら?
それは僕自身をも否定されたということに他ならない。
僕は不安で胸が張り裂けそうでした。
でも、きっと大丈夫だ、彼女は僕を受け入れてくれる。
僕は自分にそう言い聞かせ、思いきって彼女の名前を呼んでみました。
「…雪菜」
結果はノーリアクションです。
僕が考えた名前が気に入らなかったんでしょうか、
それともやはり、彼女とは意志の疎通をすることは出来ないのか、
昨日少し分かり合えた気がしたのは僕の単なる思い込みでしかなかったのか、
ふとそんな思いが僕の脳裏を過りました。
でも、それならそれでかまわない、思いは伝わらなくても、雪菜が隣りにいてくれて、
僕の出す二酸化炭素を吸って酸素に変えてくれるだけで、それだけで僕の心は満たされるのだから。
それから僕は彼女の一番大きい葉をそっとにぎり、もう1度、ゆっくりと彼女の名を呼びました。
語りかける様に、僕の思いが伝わる様に…。
「雪菜」
…やはりダメなのか、と僕が諦めかけた時です。
僕が手にしていた彼女の純白の若葉が、ほんの少しピンク色に染まっていきました。
も、もしかして、照れてるんだ。
僕は彼女を抱き上げ、彼女の名前を連呼しました。
「雪菜、雪菜、雪菜、雪菜!」僕が名を呼ぶ度に
彼女の葉が一枚、また一枚とピンク色に染まっていきます。カワイイ。
きっと今この瞬間に、君との恋が本当に始まったんだ。
と僕は思った。
つづく。
道草~loiter about on the way. - Text
http://www5a.biglobe.ne.jp/~loiter/text.htm
参考:2001/06/09(土)04時05分50秒