投稿者:ハッカ飴 2001/06/09 (土) 04:56:42        [mirai]
あああ、アプするテキストを間違えた。(;´Д`)

----------

<伊東たくと 高校二年生編>

著者:和泉一徹

明日、僕は、旅に、出る
日本海を、見に、新潟へ
工作員に、拉致、されたら、嫌だな

    (伊東たくと/中学校卒業文集より)



「九月一日土曜日の朝です、学生の皆さんは今日から学校が始まります」

毎年、同じ月の、同じ日に、同じ事をいう福留さん。そんなあなたが大好きでした。

ズームイン朝。

日本テレビが、誇る朝の長寿番組。

だけど、その年の九月一日に、あの麗しい言葉を聴く事ができなかった。



あの日の朝、俺は、愛慕する福留さんの美声を聞くためにリモコンを手にしていた。

なのに画面に哀愁の福留さんの姿はなく、代わりに無機質なブルーの壁紙に赤い文字で、
【臨時政府発表、危険ですので絶対に外出しないでください!】
という警句が、不愉快に映っていただけだった。それを見た俺は一気に不機嫌になった。

「なんでなんだよ! トメさんだせよ!」

「トメさんがあれをいわなきゃ新学期始まらないんだよ!」

俺は、そう画面に罵声を浴びせかけたくなったのを、必死で我慢して、
もう一度画面を見ることにしてみた。俺は理性的な人間だからな。

「政府機関が外出を禁止するときは、ろくなことが起きていない証拠だ」

むかし親父は俺にそういった事がある。
特に、‘政府機関発表’を強調しているときはクーデターの可能性が高いらしい。

ちなみに俺の育った家庭は、夕食時に停電が起きると、
「おっ、誰かが変電所を襲ってクーデターを起こしたぞ」とか、「よし、参加しにいくぞ」とか、
口々にいうような、おおよそ憲法第九条とは縁遠い家庭であった。

そして、そんな家庭に育った俺には、この青い画面から何か感じるものがあった。
もしかしたら、「本当に…えへへへへ」というものを感じるのだ。感じるんだよ。