投稿者:ハッカ飴 2001/06/09 (土) 05:24:34        [mirai]
伊東市は俺が五年前に日本から独立させた街だ。

現在、この日本列島は群雄割拠の島国だ。
国連もうかつに介入できないほどの勢力図が出来上がり、日々覇権をめぐって争いが絶えない。

北は、北海道艦隊と日本最大規模の陸軍を有する軍事国の蝦夷共和国。

南は、多くの独立国の連合国家、九州連邦共和国。
佐世保艦隊はアメリカの支援を受けているので、装備が素晴らしい。
そして四国は宗教国として独立。

近畿を支配する大阪政府と、中部を支配する名古屋政府は、五年にも渡る内戦の結果、
最近は経済的にも、軍事的にも疲弊しきっている。

まぁ両勢力はこの五年間、俺の街の、発展の為に尽くしてくれたので、俺としても感謝している。

この伊東市は俺のつくった都市国家だ。
主な産業は、原子力発電所からつくられる電力を大阪と名古屋に提供すること。
人口は五万人程度。国民皆兵制度をとっているので、国民はすべて半軍人だ。
悪くない国だ。何よりも俺のつくった国だからな。



九月一日にズームイン朝を見損ねてから、五年がすぎた。
この五年の間にやったことと言えば、人間を拉致してハーレムつくって、内戦起こして、国をつくった。

悪くない人生だった。

雪菜は、去年の春に母親になった。
この五年間、雪菜は俺の命令したことをはじめは嫌々ながら、最後には楽しそうにこなしていった。

現在、この都市国家の元首である市長は雪菜だ。

現在、俺は病室のベッドの上で横になっている。

五年ものあいだの不摂生と過労がたたって、あまり長生きできないと医者がいった。

「たくと兄さま」

雪菜は少し変わってしまった。

昔のようにたくと兄ちゃんと言って笑うこともなくなった。

「これがも、今後の我が国の政策方針です、目をとおしておいてください」

それだけ言うと、必要なことを言わずに帰るのが、今の雪菜だった。

「雪菜」

「はい」

「いまは楽しい?」

しかし、雪菜は、それ答えずにそのまま病室から出て行こうとした。
その後ろ姿を見て俺が、あのとき本当に拉致したかったのは誰かいまわかったような気がしていた。

「雪菜! 次はな、天下統一をやるぞ」



やはり雪菜は答えなかったが、少しだけ笑ったような気がした。



終わり

参考:2001/06/09(土)05時21分46秒