2001/06/14 (木) 12:26:27 ◆ ▼ ◇ [mirai][特別寄稿]
● 安全な社会の構築を願って(遠山文部科学大臣)
6月8日午前に発生した大阪での児童等殺傷事件は、あまりにも痛ましく
加害者に対して強い憤りを禁じ得ません。被害にあわれた皆さん、関係者の
皆さんに、心より御冥福とお見舞いを申し上げます。
事件の第一報は、国会で教育改革関連3法案を審議している時にもたらさ
れました。皮肉にも、学校教育への信頼を取り戻し、「学校を良くする、教
育を変える」ことをめざした重要法案について、党派を超えた真剣な論議を
していた最中のことでした。それだけに、亡くなられた子どもの数が次々と
増えていく報告を聞きながら、やり場のない悲しみと怒りを抑えることがで
きませんでした。
第一報を受けて、岸田副大臣を本部長とする対策本部を設置するとともに
担当者を現地に派遣するよう指示しました。午前の審議終了後、直ちに今後
の対応を協議し、対策本部を開催、それが終わるとすぐに池坊大臣政務官に
現地に行っていただきました。あわせて、心に深い傷を負った子どもたちの
心のケアのため、大学から専門家を派遣しました。同時に、大臣談話を作成
・発表するとともに、全国の関係機関に学校の安全管理の再点検を依頼する
よう指示しました。
そこまでし終わって、なお、全く釈然としない思いにとらわれました。そ
こで、談話の最後を次のように結びました。
「最近大人社会において、残虐な事件が頻発している風潮がみられ、学校
だけでは対応できない事態に鑑み、社会全体でこうした卑劣な行為を断じて
許さないとの思いを共有していただきたいと、この機会に強く訴えたいと思
います。」
その日の夕刻、小泉総理の呼びかけにより、村井国家公安委員長とともに
事態の分析を行い、日本の社会を秩序ある安全な社会にするために英知を集
めて対応するべきということについて、合意がなされました。その後の動向
に期待したいと思っています。
日本はかつて、世界で最も安全な国として知られていました。1970年代初
めにベストセラーとなったイザヤ・ベンダサン著『日本人とユダヤ人』でも
日本人は安全と自由と水をタダだと思っている世界でも稀有な国民であると
喝破されていたのを思い出します。それが今や到底「安全」とは言えなくな
ったことを憂えます。今回の不幸な事件を無駄にせず、正すべきは正し、ま
た多少のコストはかかっても、市民が心安らかに生活できるような社会を作
っていきたいものです。