2000/11/23 (木) 00:13:15 ◆ ▼ ◇ [mirai] ある朝。渚は早く起きて繭のためにサンドウィッチを作った。
昼頃、授業を抜け出し、いつもの場所へ持っていこうとすると、そこに繭がいなかった。
「繭・・・? 繭・・・?」
か細い声を発(だ)して渚は繭を探す。
すこし奥のほうまで歩いて、見ると、いつもの「白い仲間」は赤く塗られていた。
「繭・・・?どうしたの?」
赤い繭は無造作にフェンスの前で横たわっていた。
「繭・・・?」
繭の腹からあふれだす赤い血に渚は触った。「グチュッ」という音が感覚として伝わる。
「繭? 繭!?」
渚は一心不乱に、裂かれた繭を揺り動かす。
「繭? 繭?どうしたの? どうして泣いてくれないの?なんで目を開けないの?」
渚の制服に血が跳ね返る。真っ白い手が赤く染まっていく。頬に血が飛び散る。
「繭・・・?」
渚は理解できた。そして待っていたのは空白の時間だけだった。
焦点の定まらない眼で渚は、よろよろと、そして一散にそこから走り出した。
気づけばかぼそい腕で石を拾っては窓ガラスに投げつけていた。
校舎から悲鳴が聞こえる。
「キャーッ!」
「なんだなんだ、どうしたんだ?」
渚は無我夢中で石を投げつづけた。パリーンとものの崩れる音が校内の静寂(しじま)を揺らし、生徒たちが騒ぎ出す。
「里井!何してるんだお前は!」
渚の方へ沢井が駆け寄ってくる。渚は逃げる。