2005/02/04 (金) 18:43:50 ◆ ▼ ◇ [mirai]診療報酬点数というものがる。これ、何かというと一つの治療を行った際、それが一体幾らなのかを定めたもので
ある。1点が10円に匹敵する。例えば腎癌の患者さんに対して腎臓摘出術を行ったとしよう。その際の診療報酬
点数は3万1300点、つまり手術代は31万3000円という事になる。まあ、実際は入院して術前の処置や術
後の処置、そのほか諸々でもっと値段は高くなる。しかも患者さんが属している保険の種類や年齢によって支払
う金額も変わってはくるのだが、これは全国共通と考えて良い。泌尿器科の治療の一つに前立腺液圧出法という
ものがある。これは診療報酬点数に換算すると50点である。つまり500円。この前立腺液圧出法という聞き慣
れない治療、もっと一般的な表現で言い換えるなら、ずばり前立腺マッサージのことなのである。性風俗に詳しい男性
諸兄ならお聞きになったことがあるかもしれない。この前立腺マッサージというものは意外にも快感であり、風俗店
でもこの前立腺マッサージをトッピング?でサービスしている店は多い。いやホントの話、気持いいらしいのだ。前立腺ってな
に?それってどこにあるの?なにをしていらっしゃる臓器なの?と疑問に思う方もいると思うので簡単に説明
しよう。前立腺とは男性にしか存在しない臓器である。膀胱の近くにあり、尿道をドーナツのように取り巻いている。
解剖学上、膀胱の前に位置するため「前に立つ腺」つまり前立腺と呼ばれているのだ。直腸にも近く、肛門から指を
入れれば簡単に触れることができる。前立腺は生殖に関係していて、精子が動きやすいように環境を整えるのが主
な役割である。前立腺液とはこの前立腺から分泌される液である。いわゆるがまん汁というものにも前立腺液が含
まれているのだ。さて、この前立腺には大きく分けて3つの病気が存在する。前立腺炎、前立腺肥大症、そして前立
腺癌だ。熟達した泌尿器科医は直腸から指を入れただけで、この3つの病気の鑑別診断が可能である。俗に泌尿器
科医の指がゴールドフィンガーと言われる由縁である(そう呼んではばからないのは泌尿器科医だけなのだが・・・)。前
立腺炎はこの前立腺の中にばい菌が侵入して炎症を起こしたものである。この前立腺炎は抗生剤治療もさること
ながら、慢性化した場合には用手的に前立腺を圧迫し、中の膿を外に出すのが治療の根幹となる。また、一般診療に
おいても前立腺を触診することによりその前立腺の大きさ、硬さなどを直感的に捉えることが可能となる。だから
泌尿器科医は前立腺マッサージをやるのだ。決して患者さんを快感にみちびくためではない。ここで一つ言わせて頂く
が、この前立腺マッサージ。私はそんじょそこらの風俗嬢よりも確信をもって間違いなく、上手い。悪いが絶対に負ける
気がしない。というか、風俗嬢に負けるぐらいなら泌尿器科医として失格に値する。どの位の深さで、どの位の角度
で、どの位の強さで、どのように圧迫すれば気持いいかなど、ひとたび指を突っ込めばあたかも天声が聞こえるかの
ように分かるのだ。こんなこと自慢しても仕方がないのだが。もちろん、患者さんも最初は抵抗する。いきなり四つ
ん這いにされて、ケツの穴に指を突っ込まれるのだからたまったものではないだろう。「あっ・・・せんせい。それマズい
よ・・・あうっ・・・うおお!!」しかし2回目、3回目となってくると「くふゥ・・・」とため息にも似た声を上げるのみで、
シーツを握りしめたままおとなしくされるがままになる。中には診察のたびにズボンを脱ごうとする人まで出てくる。
「あら?今日はお尻からの診察はしませんよ」と私が言うと、「え?そうなの?」とすごく残念そうな表情になり、
「なんだあ。1時間半も待合室で待ってたんだけどなあ・・・」と番号札を持って悔しがる。こっちだって好きで他人の
ケツの穴に指を突っ込んでいるわけではない(しかも男だし。女性ならいいというわけではもちろんないが)。治療上
やむをえずやっているのであって、やらなくて済む患者さんにまでマッサージをサービスするいわれはない。どうしてもと
言うのなら、指名料でも払って頂きたいものだ。風俗店もピンきりだろうから、お値段もピンきりなのだろうが、この前
立腺マッサージを風俗嬢にやってもらうとなると、なんだかんだでおそらく1万円は軽くこえるだろう。しかし、泌尿器科
外来ならどんなに熟達した泌尿器科医がやっても500円でしかない。保険証なんて持ってきた暁には3割負担で
150円ポッキリである。つまり、風俗で働くお姉さんに追いつくためには100倍頑張らないとダメなのである。そん
なにやったら指がふやけてしまいます。運が良ければ早期に癌が発見されて命だって助かるかもしれないというのに。