2005/02/05 (土) 13:07:35        [mirai]
「お兄ちゃん・・・?」 

可憐は自分の部屋に戻るなり、そう叫んだ。可憐は自分の中に入ってきた”何か”と戦っていた。 

「誰ですって?可憐、あなたもう私のこと、忘れちゃったの?・・・咲耶よ」 
「咲耶?・・・咲耶ちゃんなの?」 
「そうよ可憐。覚えてくれていてうれしいわ」 

可憐はその名前を聞いて、驚いた。 

咲耶とは、小さいころから一緒に行動してきた親友で、兄と一緒に3人兄妹と 
間違えられるくらい仲がよい。ピアノがとても上手な少女で、その指使いには将来を 
すでに有望視されていた兄でさえ舌を巻くほどで正直な所可憐より技量が上・・・だった。 
しかしそれは過去の事。なぜなら・・・ 
「でも咲耶ちゃんは・・・」 
「確かに私は”死んだ”わ。でもね、やり残した事があるから、死ねないの」 
「そういえば、この楽譜、咲耶ちゃんがいつも大切にしていた楽譜だ・・・。今まで気が付かなかった。」 
そう咲耶は死んだのだ。一年前、トラックにはねられて。その時、咲耶は可憐の兄に 
ピアノを教えてもらうために、可憐の家に向かっていたところだった。背中に背負っていた 
バッグには、”あの”楽譜が入っていた。それがどういう経路なのかは分からないが、 
いつの間にか、可憐がいつも言っている楽器店の棚に並んでいたのだ。・・・浮かばれない咲耶の魂とともに。