今この瞬間にもねばねばした海底を這い回り、のたうちまわり、太古の石像を崇拝したり、水を吸った海中の花崗岩 のオベリスクに自らの憎むべき似姿を彫りつけたりしているかもしれない。 あの名前さえない生物がきまって思い出され、全身をわなわなと震えてしまう私なのだ。 わたしは夢に見る。やつらが海面にまで登ってきて、取るに足らない地震に騒いでいる微弱な人類を 悪臭放つかぎ爪で海中に引きずり込むかもしれない日を。 陸地が沈み、黒々とした大洋の底が大変動のうちに隆起する日を。 そろそろけりをつけてしまおう。ドアが音をたてている。 何かつるつるした巨大なものが体をぶつけているかのような音を。 ドアを押し破ったところでわたしを見つけられはしない。 いや、そんな! あの手は何だ! > 窓に!窓に! 参考:2005/03/01(火)09時46分21秒