> 2001/09/07 (金) 02:38:19 ◆ ▼ ◇ [mirai]> > サクラ(*´ー`)
> 5W1Hで説明な
「キミの手でボクをママの下に送ってくれないか」
サクラが俺の下を訪れてそう言ったのは昨日のこと。
そして今サクラは、リングの上で慣れない正座をし、俺が引導を渡すのを待っている。
数週間前、あれ程激しい闘いを繰り広げた強敵サクラも、今ではその時の勇猛果敢さなど見る影もなく
頼りなげな背中をこちらに向けているのみ。
俺が闘ったのはこんな男じゃなかった。
辛くも俺が勝利したが、力量、テクニックともサクラが勝っていたと思った。
その強さに尊敬の念さえ覚えた。
なのに…
俺は背後から裸締めをかけた。
俺が少し腕に力を加えるだけで、サクラの頚椎をたやすく折ることができる。
そんな状況にもかかわらず、サクラはまったく臆することもなく、じっとうつむいて
「その時」を待っている。
腕から伝わるサクラの体温。
闘っている最中は感じることのなかった、彼の鼓動が腕に伝わる。
不思議なほどに静かな、その鼓動。
少し力を入れるだけで、俺はこの鼓動を止めることができる。
…だが、それでいいのだろうか?
「…サクラ…」
「なんとか言ってくれェッ!」
いつの間にか俺は涙を流していた。
自分でもあきれるくらいに涙を流し、嗚咽をもらしていた。
さっきまで「人の命を絶つなどたやすいこと」と虚勢を張っていた男の姿はもうない。
サクラを死なせたくない。それが彼の幸せとは反することでも、彼を失いたくない。
俺は裸締めの手をゆるめ、後ろからサクラを抱きしめていた。
「タツミ…」
ふとそれまで黙っていたサクラが声をかけた。
「君の手が…暖かい」
参考:2001/09/07(金)02時27分54秒