僕は真理子に、どうしてカメは死んでしまったのだ ろう、と訊いてみた。「さぁ、私にはわからないわ。 寿命なんじゃないかしら」と真理子は熱心に解剖を続 けながら言った。「それにそれを調べるために解剖し てるんでしょ」僕は黙って頷いた。「生臭いわね」 「そうだね」僕たちは、一時間ほどかけてカメを子細 に調べた。 解剖を終えて、僕は自分の部屋に戻り、ベッドの上 に膝を立てて座った。缶ビールを飲みながら、ぼんや りと今日一日に起こった出来事を反芻していると、真 理子と出会ったことや真理子のカメの解剖をしたこと などがまるで遠い世界のことのように感じられた。 確かに僕は真理子を抱き、真理子とカメの解剖をし た。しかし、それらは全く実感のないとらえどころの ないものとしか感じられなかった。 僕はしばらく真理子のことを考えていたが、面倒く さくなって、マスターベーションをして寝てしまった。