2000/12/01 (金) 05:45:12        [mirai]
夏休みの日記。

終業式の帰りに公園でW辺たちに待ち伏せされた。逃げる隙がなかった。
「おう油、暑くなるとデブは大変だな。ちょっとこれ食ってみろや」
W辺が靴のつま先を回しながら示したのは黒っぽい塊だった。犬の糞だ。
「なんで僕が犬のうんこなんか食わなくちゃいけないんだよっ!」
「今日から休みだと思って強気だな。油のくせに」
おそらくK際に後ろから蹴り倒された。顔全体にぬちゃという音がした。
そのまま後頭部を何度も何度も踏まれつづけた。犬の糞の臭いがきつかった。

その夜、生きるのがつらいから死のうと思った。
首を吊ったら僕の身体の重みで天井が抜けた。
まるでマンガのような現実だ。

こうして僕の夏休みは最悪の気分で始まった。

半月以上、自分の家から一歩も出ることができなかった。
昼夜逆転の生活を送った。昼のあいだはクーラーをかけたまま夜まで眠った。
目が覚めると台所でラーメンを作ったりレトルトカレーを温めて食べた。
夜はずっとインターネットをしていた。ネットは僕の生命維持装置だ。

好きなアニメのページをぼんやりと見ているといつのまにか朝が来る。
本当はそんなに面白いと思っているわけではないし実際に退屈だけど
僕が人間らしく居られる場所はここしかないような気がしてならない。
掲示板に書き込みをしたりメールを出したりすると普通に話しかけてもらえる。
えみりゅんというHNの人に可愛いレスを貰ったときはどきどきした。

「ん♪ えみりゅんも夏休みは暇で,とってもたいくつなんだりゅん♪」

たまに悪夢を見た。W辺たちが僕の家にやってきてパソコンを金属バットで
叩き壊し電話線をひっこ抜いて部屋を壊滅状態にさせる怖ろしい夢だ。
涼しい筈なのに全身汗まみれになって僕は目が覚める。そして考える。
もし僕が生きているこの世の中にパソコンもインターネットもなかったら
僕は今でも生きているだろうか。

W辺の一味に出くわさないように時間を選んでたまに本屋へ出かけた。
大慌てで宿題を片づけたりしているうちに夏休みも残りわずかになった。
また学校が始まるのかと思うたびに死にたくなった。
食器用洗剤を飲んで楽になろうと思った。でも、怖くて飲めなかった。
前の学校の給湯室でA原に洗剤で髪を洗われたことをふと思い出した。

「つーか、てめえのベトベトの髪が鬱陶しいんだよ。俺が洗ってやる」
「A原さん。油はいくら洗ってもすぐまた汗かいて魔太郎ヘアなるっすよ」
「それもそうだな。じゃ、石鹸よりも超強力なシャンプーにすっか」
上半身ずぶぬれになったままタオルを取りに教室へ戻ると爆笑された。
お化け扱いされてクラス全員から物を投げられた。いつまでも投げられた。

悲しくなって涙が出た。泣きながらインターネットで心を慰めようとした。
メールが届いていた。