2001/09/21 (金) 05:52:56        [mirai]
「それでは、最終審査にはいります!」
「ちょっと待ってくださぁーーーーーーーーーーーーい!」

 バターンと会場の扉が開かれる。
 注目の中、扉を両手で押さえてはあっはあっと肩で息をする、マルチ。
 
「あれは――」

 綾香が目を見張る。見間違いでなければ、あれは。

「HMX-12、藤田まるち! おくれましたが、さんがざぜでぐだざいー!」

 いきなりボロ泣き。のっけから人間らしさ大爆発だ!

「いいでしょう」
「綾香さま?」
「審査委員長の私が許可します。マルチ、やりなさい」
「はい!」

 と、そこに駆け込んできたもうひとつの人影。

「はわ!? 浩之さん!」
「待つんだマルチ! ダメだ! 言っちゃダメだーーーーーー!!」

 だがすでに壇上のマルチは原稿用紙を広げて――。

「藤田まるち、心のポエムしりーず、そのいち!」


	『ふきふき』      藤田 まるち

	 ふきふきはすごい。
	 まども、かべも、ゆかも、てんじょうも、もっぷでふきふき。
	 きれいになるのですー。

	 ご主人様がわたしをふきふきすると、わたしもきれいになれるのかなあ。
	 それだったら、もう絶世のびじょになってるはずですよー。
	 だって、まいにちがふきふき。
	 ふきふきってすごいなあとおもう。

「以上ですぅ!」

「………………」
「………………」
「………………」

 黙り込む審査員たち。一様に複雑な表情をしていた。
 たとえて言うなら、『おちんちん』というタイトルの小学生の詩を批評するときの川崎
洋のような。