2001/10/12 (金) 23:29:37        [mirai]
近鉄の小林繁投手コーチ(48)が、日本シリーズ限定で、投手起用における“全権”
を梨田昌孝監督(48)にゆだねることになった。
大舞台で黒子役に徹するのは、本人にとっては無念の思いもあるだろうが、
これでチームのアキレスけんである投手陣がシリーズでは踏ん張るのではという内部の声が多く、皮肉にも好評である。

 チームの全権は監督にあるのが普通だが、梨田近鉄の場合はトロイカ体制が特色。
打撃部門は真弓明信コーチ(48)、投手部門は小林コーチが権限を握っている。
とくに、理論家で個性の強い小林コーチはシーズン中、ローテーションの組み立てから、
投手交代、人事まで“監督代行”を務めることが多かった。

 「監督には相談するんでしょうが、前川や門倉あたりのローテーション投手でも、ちょっと調子が悪いと即、二軍行き。
小林コーチにしたらショック療法なんだろうが、選手はそうは思わない。
ピッチャーなんて“オレが1番”というプライドの固まり。
当然、チーム内に小林批判の声が多い」とは近鉄関係者。

 象徴するシーンが、助っ人パウエルとの口論。
8月24日、勝利投手目前で交代させられたパウエルが、小林コーチに不満をぶつけたのだ。
この場面は梨田監督の仲裁で内紛まで拡大しなかったものの、その後も小林コーチの強気な姿勢は不変。
巨人、阪神でエースを張ったプライドから「ピッチャーのことをチーム内で最も知っているのはオレ」である。


 そんな小林コーチが11日、黒子発言で周囲を驚かせたのだ。
「日本シリーズに限って、第4戦までの先発投手は監督が決めた。
むろん相談は受けたが、監督の考え通りで投手を回していく」。

 “日本シリーズに限って”云々は小林コーチらしい突っ張りだが、その理由を関係者はこう解説する。


 「12球団で日本一になっていないのは近鉄だけ。悲願の日本一がうちのテーマだけど、リーグ最低の防御率(4.98)が泣きどころ。
幸い優勝したけれど、シリーズで投手陣が足を引っ張ると、小林コーチの立場は微妙になってくる。
そこで、シリーズは梨田監督が責任をとってくださいと…」

 一種の保身ととらえられているが、生え抜きの梨田監督に全権を譲り、
さらに男を上げてもらおうとする心遣いともとれる。

 ところで、投手陣たちは「これで、監督を日本一にしてあげたい、とまとまるでしょう」と歓迎ムード。
今回の小林コーチの決断が、チームにもたらす効果は大のようだが、
それを生かすも殺すも梨田さい配いかんであることは、いうまでもないか。(夕刊フジ編集委員・高塚広司)