「あれ……ここはどこだろう……体が動かない」 「ご説明いたします」 「あなたは?」 「私は天使。ここは天国。あなたは今日、死んだのです」 「え、そ、そんな」 「ショックかもしれません。しかし天国に来れたのですよ。喜んでください」 「でも、あの」 「なんですか」 「体が動かなくて、起きあがれないんです。もしかしてまだ完全に死んでいないからでは」 「いいえ。あなたは死にました」 「じゃあ、なぜ起きあがれないんですか」 「ご説明いたします。天国は、その人間のそれまでの人生でもっとも幸せな瞬間が永遠に続く仕組みになっております。ちなみに地獄はその逆、もっとも不幸な瞬間が続きます」 「は、はあ」 「ここは天国。あなたの人生でもっとも幸せな瞬間が続きます。あなたの人生でもっとも大きな幸せ……それは冬の朝に布団の中にいる時のものです」 「え、ちょっと、あの」 「ここは天国。その瞬間は永遠にあなたのもの……。それでは」 「ああっ待って! 行かないで! いやだ、ずっとこのままなんてそんな、そんな……あったか~い」