結局、貢は死んだ。悪党を殺すことは良いことなのか?この問いに答を出すこ とができずに。考えてはならないことを考えてしまったために。 そして貢の死によって主水もまた悟る。これまで自分を極悪党と言いつつ、殺 しを続けてきた主水。だがその心の奥底では、悪党を殺すことに意味があると 思い続けてきたのである。だからこそ、かつては正義に燃えていた男が殺しに 身を投じることができたのだ。しかしその思いが幻想に過ぎないことを思い知 らされてしまった。貢の死、それは自分の未来を暗示しているものである。自 分がこのままの思いで殺しを続けていけば、いつか貢のように悩む時が来る。 そしてその悩みに答を出すことができないことも主水は知っている。だから貢 が死んだ時、主水は殺しをやめる決意を固めたのだ。自分の夢が終わったこと を知ったが故に。