2002/03/18 (月) 02:13:33        [mirai]
糸井貢は蘭学を学んだインテリであり、殺しにも意義を求めてしまう。
自分たちが殺しをすることで世の中がよくなったか?人の一側面だけを
捉えて悪党だからといって殺してしまっていいのか?自分たちが殺した
者にも家族がいるはずだ、殺してしまえば残された家族は悲しむ、それ
でいいのか? 

単なるプロの殺し屋であれば、殺しはビジネスである。何も意義につい
て悩む必要はない。だが貢は悩んだ。プロに徹しきれないために。そし
てそれは同時に、殺しに自分の存在意義を見出していた主水をも脅かす
ものとなる。 

結局、貢は死んだ。悪党を殺すことは良いことなのか?この問いに答を
出すことができずに。考えてはならないことを考えてしまったために。
 
そして貢の死によって主水もまた悟る。これまで自分を極悪党と言いつ
つ、殺しを続けてきた主水。だがその心の奥底では、悪党を殺すことに
意味があると思い続けてきたのである。だからこそ、かつては正義に燃
えていた男が殺しに身を投じることができたのだ。しかしその思いが幻
想に過ぎないことを思い知らされてしまった。貢の死、それは自分の未
来を暗示しているものである。自分がこのままの思いで殺しを続けてい
けば、いつか貢のように悩む時が来る。そしてその悩みに答を出すこと
ができないことも主水は知っている。だから貢が死んだ時、主水は殺し
をやめる決意を固めたのだ。自分の夢が終わったことを知ったが故に。