【10月31日】 瀬名秀明さんの新刊「八月の博物館」(角川書店、1600円)の冒頭だけをツラツラと読む。印象としてまさしく「理科系作家」だった瀬 名さんに対して理由もなしに抱いていた設定と文章のバランスへの先入観が、導入部から軽く吹き飛ばされてしまうくらいに巧みな筆さばきで、盗掘と 戦う男の姿や「理科系作家」として「文系を甘く見るな」と言われて反発しつつ納得しつつ複雑な感情を抱きつつなミステリー作家の日常を描写してい る。「物語は、ここから始まる」と締められた1章の引き、そして自分とそれほど違わない瀬名さんが過ごして来ただろう、自分とも記憶が重なる少年時 代の懐かしさに引き込まれ、よほど自省しないと次へ次へとページをめくらされてしまう。