漏れの高校は新幹線の線路沿いにあった。 列車が通過するとき、たまにタイフォンを鳴らす運転士がいた。 生徒「あれ、なんで鳴らすの?」 先生「ああ、あれはな、この高校のOBが運転しているんだ。いつのまにか、そんな風習が出来たらしい」 いつまでも自分が卒業した高校を懐かしむ…。いい話だとおもった。 時は流れ、私も新幹線運転士になった。 見習い乗務が終わり、いよいよ自分で運転する時が来た。 いつもは無口でぶっきらぼうな指導運転士が、私の卒業した高校が間近に迫ったとき、珍しく自分から口を開いた。 「おい!遠慮することは無い。苦情が出るほど思いっきり鳴らしてやれ!」 「…承知!」 意外な一言だった。 不必要な警笛吹鳴は禁止されている。 しかし指導運転士の「指導」で、遠慮なくタイフォンを鳴らした。 指導運転士もその高校のOB、つまり先輩だった。 私と指導運転士、いや、先輩と二人、涙をこらえることは出来なかった。