2002/06/02 (日) 19:32:48 ◆ ▼ ◇ [mirai] かぽーーーーーーーーーーーーーーーん!
楓は、お風呂が大好きだ。
日本茶も好きだが、やっぱりお風呂は大好きだ。
たまーーーーーに、
「日本茶のお風呂に、入れたらいいな・・・・」
と、本気で思う。
それくらい好きだ。
その日も、楓は風呂を堪能していた・・・
(気持ちいいな・・・)
(この世に、これより気持ちいい事ってあるのかな?)
(きっと、無いよ)
「ふぅ・・・」
姉や、妹と入る風呂もいい・・・でも、一人で入る風呂も、すごくいい。
「はぁ・・・」
(そろそろでなきゃ・・・名残惜しいけど、のぼせたら大変)
楓が湯船から立ち上がろうとした、その時・・・二つの偶然が重なった。
まず、洗面器が、どういうわけか、ひっくり返っていた。
そして、楓の視線が、ピタッとそこに合ったのだ。
洗面器の裏には、洗面器を作った会社や、正式な商品名、
じつは香港で作られている事などが、事細かに書かれていた。
そして・・・
「ポ、ポリプロピレン・・・」
その洗面器は、ポリプロピレンという材質で作られていた。
(ポ、ポリプロピレン・・・よりにもよって、ポリプロピレン)
「ぷっ・・」
ツボだった。
楓は、洗面器の裏っかわを、何度も見返す・・・
(やっぱり、なんどみてもポリプロピレン)
「ぷぷぷっ・・・」
(お、おかしい! なんでこんなにおかしいの!?)
なんだか、どんどんおかしくなる。
そして、そんなくだらない事に笑っている自分が、もっと面白い。
「う、うぷぷっ・・・」
(ど、どうしてこんな名前を付けたんだろう?)
そう考えた瞬間、楓の頭に次のやり取りが浮かびあがった!
『ポリプロピレーン博士、ついにやりましたね!』
『ああ、ついに新素材を発見したピレン!これでノーベル賞はいただきピレン!』
『ポリプロピレーン博士! この新素材の名前はどうします?』
『うむ・・・私の名をとって』
『名をとって?』
『ポリプロピレンだピレーン!』
「うぷーーーーーーっ!!」
(おかしいっ! すごくおかしいっ!)
「ひぃ・・・ひぃ・・・ひぃ・・・」
(ポリプロピレーン博士なんて、そんなへんな名前の人、いるはず無いのにっ!)
「うぷぷっ! ぷぷぷーーーーーーーっ!」
(しかも、語尾に『~だピレーン』って? なんですかそれはーーーっ!)
(おかしい! もうだめ! もう笑う! もう笑ってしまう)
楓は限界に来ていた。
(ダ、ダメ! 落ち着くの! 落ち着いて楓! そう、深呼吸・・・)
「すーーーーはーーーーー! すーーーーーはーーーーー!」
(ふぅ・・・)
今までの熱っぽさが、うそのように引いていく。
楓は、何とか落ち着きを取り戻し、心から安堵した。
それが・・・命取り。
(ふぅ、何とか落ち着いたピレーン)
「ぶっ!!」
(ピレーンて!? ピレーンてあんた、自分で言うとるがな!)
「ぶぶぶっ」
(もうだめ、笑う! 絶対笑う!)
「ぶわははははははははははははははははははははははははっ!!」
その頃、居間では、楓の大笑いを聞いて、初音がため息を吐いた。
「お姉ちゃん、また笑ってるよ」
千鶴もあきれたように首を振る。
「あれは・・・ちょっと病気ね」