ビールは横に冷やすと美味いと親父が言っていた。 そんな訳ないよ、と言っても聞かずに冷蔵庫へ決まってビールを横にして冷やしていた。 酒以外煙草もギャンブルやらない親父にとってビールに関してだけ、 こだわりを持ってたのかもしれない。 酒が飲めなかった漏れは一緒に飲むこともなかった。 親父が死んだ時は何故かそんなには悲しくなかった。 あっけないなぁ、とは思ったが何か時間が寸断されるような感覚はなかった。 親戚が自宅に来て、これからのことを話し合っているとき、 ふと何か酒が飲みたくなり冷蔵庫を開けた。 横になったビールがあった。 時間がギュッて凝縮されてて思い出すことが多過ぎて泣いた。