雪焼けした小柄な男が日本光学にやってきて「マイナス50度でも耐えられるカメラ を作ってくれ」と言った。一応マイナス30度までを想定したニコンF2に自信を持っ ていた日本光学技術陣は、あまりの要求に度肝を抜かれた。その男、植村直己は北 極点踏破グリーンランド縦断旅行を記録するカメラを欲していたのだ。世界一の冒 険家のためにスタッフはニコンF2の外装をチタンに変え、可動部分の油を全部特殊 なものに交換し、皮膚が触れて凍り付いても皮膚が剥がれないようにボディ表面に 細工を施した。この北極仕様特殊カメラ「F2ウエムラスペシャル」は、偉大な冒険 家と共に、今もマッキンリーの雪の中に埋もれている。植村が最後に見た景色を体 内に残したまま。 http://www02.u-page.so-net.ne.jp/df6/masack/nas/note005.htm