2002/06/30 (日) 01:02:04        [mirai]
 「ごめん、良く聞こえなかった。」
 「…卒業式がすんだら、東京へ行くの。」
 「どうして、だ…美優?」
誠は、だしねけに聞かされた告白に色を失って訊き返した。
 「昔から夢だったの、CD出すの…。ノンノに載った写真見たプロダクションが
  デビューしないかって…。」
 「あの写真…が。」
自分の彼女が、雑誌の読者写真コーナーに掲載されて、鼻が高かった誠だった。
 客観的に見て、流行のファッションに身を包み、天真爛漫にほほえむ美優は、なまじ
のアイドルを軽く蹴落とすくらいの魅力があった。
 「誠…。」かすれた声で美優が囁く。
 「俺の彼女がアイドルか!ははは!カッコいいぜ!」必要以上の大声に、店の客が
振り向いた。
 「行けよ、東京。オレCD全部買っちゃうぜ!お前、歌大好きだったもんな。
  絶対ビッグになれるよ!」声はやや震えていた。
 「誠…。」美優の声も涙声になりかかっていた。
 「今週の第1位!浅井美優“なんてったってアイドル”って感じさ!」
 「誠っ…。」美優はとうとう泣き出した。
 「美優…。」
 「…ごめんね、ごめんね。わがまま言ってごめんね。」すすり泣きながら言った。
 「…俺達、ここまでか?」
美優は折れるくらい大きく首を横に振った。
 「嫌っ!誠とは絶対に別れられない!別れるんだったら東京になんか行かない!」
 「お前がアイドルになっても、俺達の絆は続いていけるのか?」
 「いくわ!」きっぱりと美優は言い切った。
 「だって、だってぇ…わたし、誠のこと愛してるんだもん。」
 「美優。」
 「誠。」
 「東京に行けよ、夢だったんだろ?歌うたうのが。藤井フミヤみたいにさ、メジャー
  になっても続く愛はある筈さ、だろ?」