2002/06/30 (日) 01:02:04 ◆ ▼ ◇ [mirai] 「ごめん、良く聞こえなかった。」
「…卒業式がすんだら、東京へ行くの。」
「どうして、だ…美優?」
誠は、だしねけに聞かされた告白に色を失って訊き返した。
「昔から夢だったの、CD出すの…。ノンノに載った写真見たプロダクションが
デビューしないかって…。」
「あの写真…が。」
自分の彼女が、雑誌の読者写真コーナーに掲載されて、鼻が高かった誠だった。
客観的に見て、流行のファッションに身を包み、天真爛漫にほほえむ美優は、なまじ
のアイドルを軽く蹴落とすくらいの魅力があった。
「誠…。」かすれた声で美優が囁く。
「俺の彼女がアイドルか!ははは!カッコいいぜ!」必要以上の大声に、店の客が
振り向いた。
「行けよ、東京。オレCD全部買っちゃうぜ!お前、歌大好きだったもんな。
絶対ビッグになれるよ!」声はやや震えていた。
「誠…。」美優の声も涙声になりかかっていた。
「今週の第1位!浅井美優“なんてったってアイドル”って感じさ!」
「誠っ…。」美優はとうとう泣き出した。
「美優…。」
「…ごめんね、ごめんね。わがまま言ってごめんね。」すすり泣きながら言った。
「…俺達、ここまでか?」
美優は折れるくらい大きく首を横に振った。
「嫌っ!誠とは絶対に別れられない!別れるんだったら東京になんか行かない!」
「お前がアイドルになっても、俺達の絆は続いていけるのか?」
「いくわ!」きっぱりと美優は言い切った。
「だって、だってぇ…わたし、誠のこと愛してるんだもん。」
「美優。」
「誠。」
「東京に行けよ、夢だったんだろ?歌うたうのが。藤井フミヤみたいにさ、メジャー
になっても続く愛はある筈さ、だろ?」