2002/07/10 (水) 06:05:17        [mirai]
ここで「必殺仕置人」と「暗闇仕留人」の間に隠れている「幻の裏稼業」を、
映画本編と「とらの会」に掲載された準備稿とを中心にして、一つの物語を構築してみよう。
言わば、「続・必殺仕置人」と言う名の、主水の知られざる裏稼業だ。
時は、「必殺仕置人」最終話。
鉄・錠・半次・おきんら、かけがえのない仲間たちと不本意な形で分かれ、
ただ一人江戸に残らざるを得なかった主水‥‥。
この時、錠に裏稼業を続けて行くのかどうか尋ねられた鉄は、
「足を洗うかも知れねえ。洗わねえかも知れねえ‥‥」と答えた。
それは、主水も同じ気持ちだったとも言えるだろう。 
ふとした事から嗅ぎ付けた「助け人稼業」の口入れ屋清兵衛たちに対しても、
彼らを捕らえて手柄を立てようとするよりも、
「上手い話があったら、俺にも一つ噛ませろ!」と持ちかけた事からも、
その頃の主水が「仕置屋稼業」にやる気満々だったのが見えてくる。  
「助け人」に加われなかった(?)主水は、
仕置人時代の夢よ、もう一度!…とばかりに、
世の中の片隅に隠れ潜んでいる「凄腕の仕置人(候補)」を探し求め、
コンビを組み、世の中に巣くっている悪党共を地獄送りにしてやろうと、
飽くなき闘志を燃やし続ける。そんな中、ふとしたきっかけから出会った男女を、
主水は裏稼業の仲間として引き入れる。
それが、火薬使いの三日月の清吉と、簪を武器にする女芸人のお千代だった。
そして、もう一人は‥‥走り屋の捨三!
悪党共の罠にはめられて、小塚原に首を晒される寸前だったところを主水に救われ、
「命の恩人」として忠誠を誓った捨三を加えて、
中村主水・(幻の)二度目の裏稼業が始まる。
(「必殺仕置屋稼業」#1において、主水と再会した際、
 捨三が「また、あれ‥‥やるんですかい?」と言ったように、
 過去に捨三は主水と組んで、裏稼業に携わっていた事実が伺われる。
 その事から想定して‥‥)
友情と愛情の固い絆で結ばれた、主水・清吉・お千代。
この時期、まだ「プロの殺し屋」ではなかったものの、
三人の「仕置」は冴えに冴えた!
そして、主水と清吉の二人を愛してしまうお千代。
だが、りつと言う妻と、八丁堀同心と言う役目を持つ主水にとって、
お千代と一緒になる事は不可能だった。 
清吉と祝言を挙げるお千代を心から祝福する主水!
そして二人の間には、最愛の息子・清太が生まれる。
だが‥‥この良い意味での三角関係は、清吉の妻であるお千代が、
主水を忘れられなかった事から、清吉の嫉妬心を燃えたたせる結果となり、
無惨に崩壊して行く‥‥。
己の心の中で膨れ上がって行く嫉妬心と猜疑心の虜になった清吉は、
清太さえも自分の子ではなく、主水とお千代の間に生まれた子供ではないか?と、
疑心暗鬼に陥ってしまう。そして、武家相手に請け負った大仕事の最中、
清吉は事故に見せかけて、主水とお千代を爆殺しようと謀る!
だが、不注意によって火薬の量を誤った為に、
仕置の現場で大爆発が起こってしまい、清吉とお千代は行方不明‥‥
辛うじて、主水一人が生き延びる羽目となる。
「不慮の事故」で、友達であり、恋人でもあった仲間を失ってしまった
(と思い込んだ)主水には、ただ悔恨だけが残っていた‥‥。
再び一人ぼっちになってしまった主水は捨三とも別れると、
死んだ清吉とお千代の事を忘れる為に「仕置人」と言う名を封印する。
そして、「仕留人」(または「始末人」)と言う名の新たな仲間を探し求め、
果てしなき裏稼業‥‥
いずれは、自らを地獄へと導く闇の世界を、ひたすら歩んで行くのだ。
主水が、清吉とお千代が生きていた事を知ったのは、遙か20数年後‥‥。
かつての恋人は記憶喪失となり、
かつての友は自分を付け狙う復讐鬼と化していた!
そして、主水と彼らとの再会は、主水の裏稼業人生が、遂に終焉を迎える時だった‥‥。