8月 9日 「おばさん、もう用ナシになってしもた…」 「セミ捕りのおばさんは、セミ捕ったら、もうここでは用なしや」 「出ていかな、あかんかな…」 「な、観鈴ちゃん」 「セミ捕りのおばさんは、どないしたらええと思う?」 「あんたにひどいことしたもんな、おばさん…」 「あんた見捨てようとしたもんな…」 「セミ捕りおばさんは、恐いおばさんや…」 「せやけどな、まだ若いんやで」 「セミ捕りお姉さんぐらいにしといてや」 「ほな、いくわ、うち」 「またセミ入ってきたら、呼んでや」 「…おしえて」 「ん? なにをや」 「やり方」 「えっと、ここや」 「これは?」 「ここや」 「つぎは?」 「待ってや。座り直すわ」 「うん」 「ここや」 「もう、うち贅沢言わへん」 「明日最後の一日や」 「一日中、ふたりで一緒にいよ」 「うちの希望はそれだけや」 「な、観鈴」