>  2002/08/16 (金) 18:11:05        [mirai]
> 「長瀬ちゃん・・・ウニ、好き?」
>  どこまでも続く暗黒の世界。
>  自分の足の先も見えないほど暗いのに、
> 「ウニ、好き?」
>  目の前で微笑む瑠璃子さんだけは、闇を切り抜いたように鮮明だ。
>  ああ・・・夢なんだなぁ、と思う。
> 「ウニ・・・」
>  明晰夢・・・夢を夢と知覚するなんて、とっても珍しい事だ・・・
>  すごいや・・・
> 「ウニ、好き?」
> 「え?」
> 「長瀬ちゃんは、ウニ、好き?」
>  瑠璃子さんは、なにやら儚げな微笑みを浮かべた。
>  幽かな存在感が、どうしようもなくもどかしい。
> 「瑠璃子さん・・・あの、せっかく夢で逢えたんだし・・・」
> 「ウニ」
> 「・・・」
> 「・・・」
> 「う、うん、まあ、キライじゃないケド・・・」
> 「そう」
>  にこっ・・・
>  優しげな微笑みを浮かべた瑠璃子さんは、後ろ手に持っていた、
> 「ウニ」
>  を、僕の眼前に突きつけた。
> 「紫ウニだよ・・・」
> 「うっ・・・」
>  濃い赤紫色の刺が、ゆっくりと、しかし確実にうごめいている。
>  少し潮の香りがして、なんだか、物凄く嫌な気持ちになった。
> 「る、瑠璃子さん・・・ウニはわかったからさ、もっと他の事を・・・」
> 「おいしいよ」
> 「し、知ってるけどさ・・・」
> 「食え」
> 「へ?」
>  およそ瑠璃子さんらしくない言葉に、僕は間の抜けた声を上げた。
>  瑠璃子さんは、僕にかまわず続ける。
> 「ウニ食え、ホレ、ウニ食え」
>  目の前に、紫色の刺が迫る。
> 「ちょっ・・・うわっ」
>  瑠璃子さんは、微笑んだままで、ぐいぐいとウニを押しつけてきた。
> 「いたっ! いたたたたっ! 瑠璃子さん、ウニが痛い!」
> 「ウニ食え」
> 「いててててててっ! 刺さってる! 刺さってますっ!」
> 「ウニウニ」
> 「のわたたたたっ! めちゃくちゃ深いっ! いたたたたっ!」
>  瑠璃子さんの持ったウニは、容赦なくほっぺたに突き刺さる。
>  僕は悲鳴を上げて―――
>  ガバッ!!
>  気づけば、僕は布団を跳ね除けていた。
>  四角い窓には朝の光があふれていて、すずめのさえずる音が聞こえる。
>  あぁ・・・夢から覚めたのか・・・
>  ちぇっ・・・せっかく瑠璃子さんに逢えたのに、ひどい夢だった。
> 
>  その日の昼休み、僕は校庭で瑠璃子さんを見かけた。
> 「こんにちわ、瑠璃子さん」
> 「・・・こんにちわ、長瀬ちゃん」
>  ゆるゆると微笑む瑠璃子さんは、夢の中の姿とそっくりだ。
>  いや、瑠璃子さんの住む世界は、夢と現実の区別がないのかもしれないけれど・・・
> 「なにやってるの?」
> 「チョウチョの幼虫をつついて、臭い汁を出してるんだよ」
>  にこっ・・・
> 「そ、そう・・・」
>  妙な間が開いた。
>  僕は、会話の間に開く、『間』ってやつが苦手だ・・・
>  嫌われてるんじゃないか・・・そんな邪推が、僕の頭を支配する。
>  僕は、無理に話題を振った。
> 「あ、あのさ瑠璃子さん」
> 「・・・」
> 「ウ、ウニ―――」
> 「・・・」
> 「ウニは―――」
>  あっ!!!
> 「・・・」
> 「な、なんでもないよ・・・」
> 「そう・・・」
>  瑠璃子さんの左手に、馬糞ウニがのっていたので、僕は質問を取りやめた。
>  世の中には、知らなくてもいい事って、あるよね・・・
> 「瑠璃子さん、今日は、電波集めないんだ・・・」
> 「・・・忘れてた」
>  そう言って、瑠璃子さんはクスクス笑った。
>  僕も、つられるようにして笑った。
>  瑠璃子さんは、笑いながら、僕に囁く。
> 「ね、長瀬ちゃん・・・今夜も逢おうね」
>  僕の笑顔が凍った。

ZEN BUN IN YOU UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE

参考:2002/08/16(金)18時06分55秒