> 2002/08/16 (金) 18:12:55 ◆ ▼ ◇ [mirai]> > 「長瀬ちゃん・・・ウニ、好き?」
> > どこまでも続く暗黒の世界。
> > 自分の足の先も見えないほど暗いのに、
> > 「ウニ、好き?」
> > 目の前で微笑む瑠璃子さんだけは、闇を切り抜いたように鮮明だ。
> > ああ・・・夢なんだなぁ、と思う。
> > 「ウニ・・・」
> > 明晰夢・・・夢を夢と知覚するなんて、とっても珍しい事だ・・・
> > すごいや・・・
> > 「ウニ、好き?」
> > 「え?」
> > 「長瀬ちゃんは、ウニ、好き?」
> > 瑠璃子さんは、なにやら儚げな微笑みを浮かべた。
> > 幽かな存在感が、どうしようもなくもどかしい。
> > 「瑠璃子さん・・・あの、せっかく夢で逢えたんだし・・・」
> > 「ウニ」
> > 「・・・」
> > 「・・・」
> > 「う、うん、まあ、キライじゃないケド・・・」
> > 「そう」
> > にこっ・・・
> > 優しげな微笑みを浮かべた瑠璃子さんは、後ろ手に持っていた、
> > 「ウニ」
> > を、僕の眼前に突きつけた。
> > 「紫ウニだよ・・・」
> > 「うっ・・・」
> > 濃い赤紫色の刺が、ゆっくりと、しかし確実にうごめいている。
> > 少し潮の香りがして、なんだか、物凄く嫌な気持ちになった。
> > 「る、瑠璃子さん・・・ウニはわかったからさ、もっと他の事を・・・」
> > 「おいしいよ」
> > 「し、知ってるけどさ・・・」
> > 「食え」
> > 「へ?」
> > およそ瑠璃子さんらしくない言葉に、僕は間の抜けた声を上げた。
> > 瑠璃子さんは、僕にかまわず続ける。
> > 「ウニ食え、ホレ、ウニ食え」
> > 目の前に、紫色の刺が迫る。
> > 「ちょっ・・・うわっ」
> > 瑠璃子さんは、微笑んだままで、ぐいぐいとウニを押しつけてきた。
> > 「いたっ! いたたたたっ! 瑠璃子さん、ウニが痛い!」
> > 「ウニ食え」
> > 「いててててててっ! 刺さってる! 刺さってますっ!」
> > 「ウニウニ」
> > 「のわたたたたっ! めちゃくちゃ深いっ! いたたたたっ!」
> > 瑠璃子さんの持ったウニは、容赦なくほっぺたに突き刺さる。
> > 僕は悲鳴を上げて―――
> > ガバッ!!
> > 気づけば、僕は布団を跳ね除けていた。
> > 四角い窓には朝の光があふれていて、すずめのさえずる音が聞こえる。
> > あぁ・・・夢から覚めたのか・・・
> > ちぇっ・・・せっかく瑠璃子さんに逢えたのに、ひどい夢だった。
> >
> > その日の昼休み、僕は校庭で瑠璃子さんを見かけた。
> > 「こんにちわ、瑠璃子さん」
> > 「・・・こんにちわ、長瀬ちゃん」
> > ゆるゆると微笑む瑠璃子さんは、夢の中の姿とそっくりだ。
> > いや、瑠璃子さんの住む世界は、夢と現実の区別がないのかもしれないけれど・・・
> > 「なにやってるの?」
> > 「チョウチョの幼虫をつついて、臭い汁を出してるんだよ」
> > にこっ・・・
> > 「そ、そう・・・」
> > 妙な間が開いた。
> > 僕は、会話の間に開く、『間』ってやつが苦手だ・・・
> > 嫌われてるんじゃないか・・・そんな邪推が、僕の頭を支配する。
> > 僕は、無理に話題を振った。
> > 「あ、あのさ瑠璃子さん」
> > 「・・・」
> > 「ウ、ウニ―――」
> > 「・・・」
> > 「ウニは―――」
> > あっ!!!
> > 「・・・」
> > 「な、なんでもないよ・・・」
> > 「そう・・・」
> > 瑠璃子さんの左手に、馬糞ウニがのっていたので、僕は質問を取りやめた。
> > 世の中には、知らなくてもいい事って、あるよね・・・
> > 「瑠璃子さん、今日は、電波集めないんだ・・・」
> > 「・・・忘れてた」
> > そう言って、瑠璃子さんはクスクス笑った。
> > 僕も、つられるようにして笑った。
> > 瑠璃子さんは、笑いながら、僕に囁く。
> > 「ね、長瀬ちゃん・・・今夜も逢おうね」
> > 僕の笑顔が凍った。
> ZEN BUN IN YOU UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
ZUNBU MOJIBAKE
参考:2002/08/16(金)18時11分05秒