2002/08/16 (金) 19:22:07        [mirai]
 「…… きょ う ふ の み そ 汁 よ……」

 大きな手が迫ってきた。男の子は抵抗できなかった。
テーブルに無理矢理座らされた。
 「食え。うまいぞ」
 「あ。もったいないわ」
 「まあまあ。こうなってしまってはどうしようもないさ。ほら。ほれ。これから食ってみろ!」
 その箸は、さっきなべの中で見た、良くわからない物をはさんだ。薄切りにされ、
水気をたっぷり吸ったそれは、箸が男の子の口に運ばれるその動きに合わせ、小気味よくゆるゆると震えた。
男の子は反射的にそれを跳ねのけた。
それでも相手は、依然としてニコニコ笑っていたから、
男の子、声を大にして叫ばざるを得なかったのだ。
 「パパ。いやだよ!」

 男の子は、泣き出してしまった。
 「おやおや。黙ってて悪かったよ。食わず嫌いするな。
きょう の ふの み そ 汁 は格別にうまいぞ。あっはっは、パパの大好物だ。あっはっは。」
 「ほっほっほ。ごめんねえ。ほーっほっほほほっほっほほほっほほほほっほ」
 「離婚してー。ところでお前、何で、震えてるんだ?」
 「パパ。だからぼく、おしっこしたかったのー」
 「そうか。してこいよ」
 「パパ。もうでてるよー」
 「そうか。ほっはっは」
 「あっほっh」