2002/08/24 (土) 21:51:28        [mirai]
 カランカランカラ~ン
 カウベルの音に、由綺と話しこんでいた俺は顔を上げた。
「こんにちわ、冬弥君、由綺ちゃん」
「いらっしゃい、みさき―――」
「あ、こんにち―――」
 ・・・
 ・・・
 デケェ!!!
 店に入ってきた美咲さんの鼻は、異様にデカかった!
 俺は吹いていた皿を床に落とした。
 由綺は、コーヒーにミルクを注いでいる途中だったのを忘れた。
 椅子に座って本を読んでいたマスターが、椅子から転げ落ちる。
 彰が真っ白になった。
 ・・・
「うふふ、今日はにぎやかね」
 と、いつもの優しい微笑を浮かべ、カウンターにつく。
 デケェ!
 近くで見るとますますデケェ!
 マスクメロンくらいある!
 恐怖・・・そう、それは恐怖だ! 日常に現れた非日常!
 異形の存在!
 だがそれでも、人は知的好奇心を失わないものなのだ。
 恐る恐るだが、最初に質問したのは、この俺だった。
「み、美咲さん・・・鼻、どうかした?」
「?」
 わからない、という風に小首を傾げる。
 巨大な鼻が、ぶるんと揺れた。
 鼻がなけりゃ、可愛い仕草なのかもしれないが、今はただただ、恐ろしいのみだ。
 俺は震えながら、美咲さんに水を出す。
 美咲さんはいぶかしがりながら、それを受け取った。
「一体どうしたの、皆―――」
 言葉が途切れたのは、グラスに映った自分の顔を見たからだった。

「は、鼻デカぁっ!!!!!」

「って、今気づいたんかーい」
  彰は、優しくツッコんだ・・・