投稿者:_ 2002/08/25 (日) 02:33:39 ◆ ▼ ◇ [mirai]やっぱり初デートっていうのは気合いが入るわけだ。
それが山歩きっていう、よく言えば健康的、悪く言えばジジくさいものになったのは、
裕幸君に「澤名さん、今度の日曜日いっしょに山歩きに行かない?」って向こうから誘ってきたからだった。
そういうリクエストならってことであたしは「じゃあお弁当作っていくね」って答えた。
料理はちょっと自信あるのよ。よし、じゃあ山菜おこわでも作っていこうか。山だし。決まり。
でもちょっと色が地味だから、クチナシの実で黄色にするっと。うん。それならいい感じ。
そんな感じでどんどん献立を決めていって、あたしは日曜に備えていった。
そして当日朝5時。お弁当を作るあたしの前にそれは現れた。
昨日の晩にタイマーを掛けておいた炊飯器の中の緑色の物体。綺麗な黄色になる筈の山菜おこわは緑色に染まっていた。
クチナシかなあ。クチナシをおこわに使ったのは初めてだった。実験しておけばって思っても、もうどうしようもない。
あたしはどうにかしようと冷蔵庫を開けた。ふと、油揚げが目に止った。油揚げならコンビニに売ってる。
これでリサイクルするしかないか。あたしはお稲荷さん用の付け汁を作ることにした。
「澤名さん料理上手いね、この一口いなりずしおいしいよ。おれ和食好きなんだ」
「そう? あたしも好きなんだ。どんどん食べてね」
あたしはなるべくお稲荷さんの具を見せないように、丸ごと口に放り込んだ。
裕幸君のほおに緑色のご飯粒が見えた。
あたしはあわてて手を延してそのご飯粒を取った。
裕幸君はきょとんとした顔であたしを見つめた。
「あ、ご飯粒付いてたから」
裕幸君は恥かしそうに下を向いた。
---
今週は歴史物でまとめるつもりだったんだけどなあ