2002/09/03 (火) 05:52:05        [mirai]
<物語>の重要性はそれが個人のリアリティ形成の材料となる所である。
個人がある行為をする際、自分や関連する人物たちをキャストにして
今後の行為を物語化し、さらに感情を伴わせてリアリティ(現実感覚)
とする。これら、物語化・感情のプロセスを通じて人間は環境と相互作用
をする動機を形成する。

人間の記憶には現実生活から得られるものと<物語>から得られるものとが
ある。こうした記憶のストックから物語化の材料を得る。この場合、
問題となるのが、環境との相互作用に適した物語化ができるか否かである。

「虚構と現実の区別ができていない人」の中には、物語化に際して、
あまりに<物語>に依拠してしまう事である。例えば漫画の異常描写や
成年漫画のエロ描写に接しすぎてそこで強調されている真実の一面を
真実の全てと捉えて、この「真実」を現実生活にも適応してしまう神
経症患者がいる。これほどではないにせよ、(結果として)物語化に失敗
して社会不適応者とか呼ばれる者は、物語化の作用に障害がある。
「お前には現実が見えていない!」というのは物語化による行為が
結果として環境との相互作用に失敗した場合を指す。要するに相互
作用のバランス次第なのである。

物語化の障害は、人格の障害としても考えられる。人格とは心理・動機・
関係・記憶等の要素がかみ合う歯車のように相互作用する一貫したシス
テムである。環境とブツかる歪んだ一貫性も、逆に調和する一貫性もある。
一度形成された人格システムは作り直しが効かない。