2001/01/28 (日) 22:20:06        [mirai]
 ボクは栞ちゃんの夢の中で栞ちゃんと逢った。
  彼女を励まして、ボクに残されたたったひとつの願いをあげるはずだ
 ったのに・・・。
  ・・・彼女は逆に、ボクを励ましてくれた。
  ボクのお願いを受け取ってはくれなかった。
  ボクは栞ちゃんの優しさが嬉しかった。
  だから、栞ちゃんと・・・約束した・・・。
  出来たらまた逢いたい・・・。

  ・・・だけど。

  ボクは栞ちゃんみたいに強くない。
  目を覚ましてもボクはひとりぼっちだから。
  誰にも甘えられない。
  誰にも頼れない。
  帰っても誰も喜んでくれない。
  ボクはひとりじゃ生きてはいけない・・・。
  帰ってもボクには辛いことのほうがあまりにも多すぎるから・・・。

  ・・・それに、ボクは・・・もう・・・。
  体に・・・力が入らない・・・。
  どんどん力が抜けてゆく・・・。

  ボクは、もうすぐ消えるんだ・・・。
  ボクにはもう、存在する価値さえないから・・・。

  「嘘ついて・・・ごめんね・・・栞ちゃん・・・」

  あれからボクは7年前、祐一君と一緒に天使の人形を埋めた遊歩道に
 来ていた。
  今、ボクの体は背中にある翼でふわふわと宙に浮いている。
  ボクはもう、現実に帰る事も、この街に存在し続ける事も出来ないか
 ら、彼女に内緒でお願いをしようと思う。
  結局、掘り出す事が出来なかったけど、間違いなくここにあるはずな
 んだ。
  
  奇跡を起こしてくれる天使の人形が・・・。
  
  ・・・栞ちゃんが元気になればみんなが喜んでくれる。
  栞ちゃんが元気になれば祐一君もきっと、幸せになれる。

  ボクじゃ、駄目だから・・・。
  祐一君を幸せにすることなんて出来ないから・・・。
  栞ちゃんと違って、喜んで迎えてくれる人もボクには居ないのだから・・・。
  それに、いくら栞ちゃんががんばって意識を取り戻しても、このまま
 だと栞ちゃんはまた病気で・・・。

  だから、ボクは栞ちゃんの為にお願いをすることに決めた。
  ボクは、栞ちゃんのことを好きになったから。
  そして、それが祐一君の為にもなる。
  これが・・・一番いいんだ。
  ボクひとりが最後の願いを諦めて消えることで、みんなが幸せになれ
 る。
  だから、自分が消えてしまうのも怖くなんかない。
  さびしくなんか・・・ない。
  消えてしまえば、きっと・・・お母さんの所にいけると思うから。
  お母さんの所に行けば、ひとりぼっちじゃないから。
  そう考えたボクは、まだ悩んでいる自分自身を納得させた。
  栞ちゃんとの約束を破ることになるけれど・・・。
  ボクは、たったひとつだけ残った願いを叶えてくれる天使の人形に願
 った。

  ・・・どうか、栞ちゃんの病気が治りますように・・・。

  そして、ボクの事なんか忘れて、祐一君と一緒に幸せになれますよう
 に・・・。