2002/09/23 (月) 17:21:40 ◆ ▼ ◇ [mirai]記憶する限り、いちばん居ずまいを正して書いたのは、1984年4月、
北朝鮮に帰国した在日朝鮮人の運命に関する記事だった。
祖国再建に役立ちたいという思いから、帰国していった在日朝鮮人は、
1959年からの約10年間だけで、8万人以上。高等教育を受けた人や
技術者が多かったが、特殊な政治体制の中で、差別され、
山奥に追放されて生活に困窮する者が続出、刑死する者もいたらしい。
取材源は、子どもや兄弟を北朝鮮に送り返した在日の肉親で、
話を聞くにあたって、「あなたの書き方次第で、息子は処刑されます。書くなら、
それを分かったうえで……」と、泣きながら念を押された。
居ずまいを正して書かざるを得なかった。
2回の連載で、400字詰め原稿用紙にして、約40枚。リアクションは大きく、
「よく書いてくれた。いま電話口で、一族が集まって泣いています」という
感謝の電話がある一方、在日朝鮮人の団体の抗議が殺到した。
回線がパンクするほどの電話、段ボール箱単位で届くハガキ、ひっきりなしの面会、
そして新聞社を包囲する連日のデモ。社内からも、
「KCIAの手先」といった陰口が聞こえてきた。そのころ、
この種の問題に直接触れることをはばかる雰囲気が、マスコミの間にまだあった。