土砂降りの雨のなか、傘も差さずに濡れている。 好き好んでこんな真似をしているわけじゃない。歌のセリフじゃないが、傘が無いのだ。 とぼとぼと駅からアパートへの帰り道を歩きながら傘を盗んだ奴を呪っていると 声が聞こえた。振りかえるとそこには黄色い傘をさした一人の少女が立っていた。 「あの…雨降ってますよ?」 「降ってるな。バケツをひっくり返したような雨が」 「雨に濡れるの好きなんですか?」 「大っ嫌いだ。特に服が張り付くのが気持ち悪いな」 「…傘。使わないんですか?」 「あれば使うさ」 「はい。どうぞ」 少女はにっこりと笑い。自分の黄色い傘に入るよう促した。 「悪いな」