>  2002/11/19 (火) 17:26:44        [mirai]
> > 「よっ!」
> > 突然背中を叩かれて我に返った。
> > 後ろを振り向くと頬に指先が食い込む。
> > 「あはははは! やっぱり引っかかったぁ!」
> > 楽しげな、そして聞き覚えのある笑い声が背中にひびいて、
> > 俺はベンチから腰を上げると、照れ笑いを浮かべながら振り向いた。
> > 「葉子、おかえ・・・」
> > 俺の目に映ったのは、昔のままの愛らしさと、年相応の女らしさを
> > 身につけた幼なじみと、その横に立って穏やかな笑みとともにこちらを
> > 見ている・・・葉子にお似合いの・・・男だった・・・。
> > 俺の心の中にあった都合のいい恋物語は即座に幕を閉じ、同時にどす黒い
> > 感情が染みのように俺の感情を支配していった・・・。
> 「や。久しぶりだね」
> 俺は内心の動揺を押さえて男の姿を見ないようにしながら平然と答えた…つもりだ。
> そしてそこで初めて気がついたように男を見て、葉子に聞いた。
> 「こちらの方は?」
> 「あはは。なあにその言い方?敬語なんかつかっちゃって似合わないよー」
> しまった。つい警戒心が表に出てしまったようだ。
> 慌てて、いやそんなこと無いよなんて言おうと思ったが声にすることは出来なかった。
> 「長い間会ってないとね、いろいろあるさ」
> そう、色々ある。コイツは誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。
> 葉子の横には俺が立つつもりだったんだ。なんで俺の居る筈の場所を取るんだ。
> 「よろしく!俺は山田武志。タカシって呼んで良いぜ」
> 武志はそう笑いかけながら俺の動揺を見透かしたように葉子の肩を抱いた。

「あ、ああ。よろしく山田くん。俺は…」
そこまでいうと遮るように武志は手を振りながら言った。
「いいよいいよ。話は葉子から聞いてる」
ムカツクやつだ。人の話は最後まで聞くように教わらなかったのだろうか。
葉子はそんな武志と俺との雰囲気を全然気にしてないように
「ねぇ。せっかくだから3人でお茶でもしようよ」
なんて能天気に言い始めた。葉子も葉子だ。なんでこんなヤツを選んだんだ?
俺は心の中で彼女を責めながらもそれを伝えることは出来ずにいた。
「いや、悪いけど実は用があるんだ。じゃあ、もういくわ。」
こう言って歩き出すのが俺に出来る精一杯の意思表示だった。
歩き出した後ろから二人の声が聞こえてくる。
ーあいつお前に気があったんじゃないの?酷い女だな。
ーえ。やだ。変なコト言わないでよ。
………お前等、覚えてろよ。

参考:2002/11/19(火)15時58分42秒