2002/11/22 (金) 19:12:20        [mirai]
雪印子さん物語1

「おにくー、おにくー、美味しいおにくはいかがですかぁ」
肉売り場の一角にて笑顔で立つ女の子、雪印子ちゃん。
なんだか語呂が悪いんであたしは、ユキちゃんって呼んでいるけどね。
ユキちゃんは雪印食品のイメージキャラクターで培養人間とかいう人工の人間らしい。
難しい事がよくわかんないあたしにゃ、普通の可愛い女の子にしか見えないんだけどねぇ…。
ユキちゃんはさ、最近の不祥事のせいで地に落ちた雪印食品のイメージを少しでも回復しようと、
提携先のスーパーで肉の販売をやってるんだって。こんなに小さいのにねぇ…。
で、提携先の一つであるウチの店にもやって来たわけさ、同じ売り場で働いてるあたしとは、
いわば同僚って感じかね。こっちは向こうの手伝いはしなくて良いって言われてるんだけどさ、
あんな小さい子一人じゃ大変だろ?まあ、オバサンのおせっかいってやつで、
特設コーナーの設置とか色々と手伝ってあげてたんだよ。
最初は遠慮しちゃって、「私一人で大丈夫ですぅ~」なんて言ってたけど、
無理矢理手伝ってるうちにけっこう仲良くなってきてね。次の日から店が終わる時には、
「えへ、今日は二つ売れましたぁ!」なんて教えてくれるようになったんだよ。

「このおにくは正真正銘の国産牛ですよぉ!雪印をよろしくお願いしますぅ!」
額に汗をかきながら必死でアピールするユキちゃん。隣には肉を乗せたワゴンが置いてあって、
ワゴンの周りには『このおにくが出来るまで』と説明が書かれたパネルが貼られててね、
そのパネルには、牧場主のおじさんと一緒に笑顔で写るユキちゃんや、精肉工場を見学するユキちゃん、
搬送トラックを手を振って見送るユキちゃんの写真なんかも一緒に貼ってあるのさ。
でもね、そんな風に一生懸命ユキちゃんが売り場に立って声をあげても、誰も立ち止まりもしない。
みんな冷たい目でユキちゃんを見るだけで通りすぎてっちまうんだよ。
たまにまともな人間が同情してくれて買っていったりもするんだけど、
これじゃあんまりじゃないか…可哀想だねぇ…。

今日でユキちゃんが来て五日目。
まあ、あたしにだって仕事あるわけでさ、ユキちゃんばかりも見てられないのよ。
で、あたしが仕事に追われてきりきりまいの時に、あの事件が起きたんだ。