われわれは様々な情報収集に努めた。知り合いになった労働運動の闘志や学生のグループとも話 し合った。彼等も情報を得ていた。貨物列車や闇列車があるというのである。運転手との交渉次第で それらに隠れて乗ることが出来るというのである。「しかしお前はやめた方がいい。」と活動家のリーダ ーは言った。 「貨物列車はすべて屋根のない無蓋車で、ここらは炭鉱地帯だから、旅行者は貨車に積まれた石炭 や鉱石の山に這いつくばらされて、その上からシートを被せられるんだ。さらに駅に着くたびに兵士に よる検問があって、彼等はシートの下にときどき密行者がいることを知っているから、金品を強奪する 目的で貨車を虱潰しに調べるだろう。捕まればそれこそ本当に取り返しがつかないし、特に日本人の お前など格好のカモになるだけだ。」と言った。