消防署の人たちが来て、救命講習会がひらかれた。 消防署長の、はじめのあいさつでこんな話があった。 「以前、御茶ノ水駅でサラリーマンの方が突然倒れましてね、 学生さんが一人きまして、サラリーマンのね、口の中からゲロをかきだして、人工呼吸をしたんですよね、 その学生さん、たまたま医学部の学生さんだったんですね、 で、もう一人誰かいませんか!と言ったんですね。そうすると、もう一人、大人の方が来てね、 心臓マッサージをしたんですね。 その人も大学の教授をやってる方で、たまたまね、ボランティア活動をしていてね。 消防署に来て、救命講習をうけていたんですよね。 もう倒れて、嘔吐しちゃってますから、 その学生さんはね、ハンカチでこうゲロをかきだしてね。 一生懸命、救命をやってくれたわけです。」 僕は思った。 すごいなー、ふつうでも人工呼吸なんてできるかわかんないのに、 ゲロをかきだしてまで、俺にできるかなぁ、いい話だなぁ。 と思っていたら、署長は、 「まあ結局は、その方は亡くなってしまったんですが。」