2003/02/08 (土) 12:53:50 ◆ ▼ ◇ [mirai]「ううう……なんであたし、巨乳に生まれたんだろ……」
「立派だったわよ、梓」
第二部終了後、泣き声の梓に、千鶴さんは諭すようにやさしい声をかける。
「大体、なんでこんなことしなきゃいけないんだよぉ」
「いいこと梓。そもそもこの鶴来屋はこの劇場が発祥の地なのよ」
……え?
「私たちのおじいさま、柏木耕平はもとはと言えばこのちっぽけなストリップ劇場の専属
ダンサーだった……でも、持前の負けん気と努力で、今日の鶴来屋の基礎をつくりあげた
のよ」
えーと、ストリップから旅館に至る過程がよくわからんのですが。
「創業当時は『マリリソの宿・遊びきれないホテルは鶴来屋』として一気に全国区へとの
しあがったわ……一時期は仲居が全員マリリソ姿だったそうよ」
そんな旅館イヤだなあ……。
「おじいさまの演じるマリリソは、それは天下一品だったわ……」
遠い昔を思うように、千鶴さんの声は夢見るようにひびいた。
それにしても、俺のじいさんってそんな人だったのか。
柏木耕平。一族に伝わる鬼の力を制御することに成功し、隆山一の旅館鶴来屋を一代で
築き上げた立志伝中の人物。
まさかそんな裏の顔があったとは……。
「鶴来屋の経営が軌道に乗って、もうこんなところで踊る必要がなくなってからもおじい
さまはこの舞台から降りようとはしなかった。なぜだかわかる、梓?」
「…………」
「それはいつまでも初心を忘れまいとする誠実な心……そして何よりも、マリリソ目当て
に隆山を訪れるお客様を裏切るまいとする、もてなしの心! これが鶴来屋の創業精神な
のよ! そんなおじいさまの思いを受け継ぐためにも、私たちがこの伝統のともしびを消
してしまうわけにはいかないの!」
やな伝統だなあ。
「生涯現役ストリッパーでありつづけたおじいさま……それでもやはり年に打ち勝つこと
はできなかった。
そしておじいさま亡き後、足立さんがひとまず代役で出演したけれど、とうてい往年の
人気を取り戻すことはできなかった……」
…………。
がんばってるなあ、足立さん……。
「そんなときあらわれたのが、叔父さまだったわ」
なんですとー!?