>  2003/02/09 (日) 11:01:26        [mirai]
> 「……んっ」
>  なにかを言おうとしたけど、耕一は唇を離さなかった。
>  あたしはゆっくりと瞼を閉じ、耕一に身を任せた。
>  庭の方から吹き込んだ爽やかな秋の風が、あたしの髪をサラサラとなびかせた。
>  雲ひとつない青空から、眩い陽射しが射している。
>  今日もまた、暑くなりそうだ。
>  真っ白な光に包まれながら、あたしは耕一の唇を感じ続けた。
>  そ……っと、唇を離す。
>  真剣で、それでいてやさしい耕一の顔。
>  何か言わなきゃ。
>  そうだ。そうだよ。
>  あたし、耕一にまだきちんと自分の気持ち、言ってない。
>  もてあました感情をぶつけるばっかりで……昨日だって、言いたいこともろくにいえな
> いうちに……。
>  ううっ、顔が、顔が赤……。
>  そうだ、きちんと言おう。
>  耕一にあたしの気持ちを伝えよう。
>  もうそんなことはお互い良く分かってるんだけど、これ以上やたらに言い合うことでも
> ないのかもしれないけれど。
>  これは、あたしの決意表明。
>  あたしと耕一の、新しい関係。今までと違う、もう一歩進んだ二人のかたちのために。
>  小さな声でもいい、聞こえればいいから、
>  ちゃんと言おう……『耕一、好きよ』って。
>  うー! いざとなると駄目だなあ! 昨日はあんなに夢中になっていってたのに……あ
> あなっちゃうといくらでもいえるんだけど、こう、昼間の光の下で、面と向き合って言う
> となると恥ずかしいな……。
>  あー、でも言うぞ! 言うの!
>  すうっと深呼吸して。
>  ごくり。喉の動く感触。
> 『耕一、好きよ』
>  それだけのこと。言えないはずがない。
> 『耕一、好きよ』
>  その言葉を心に思い浮かべるだけで、鼓動がはねあがる。
>  ああっもう、あたしの心臓! すこし落ち着け!
> 『耕一、好きよ』
>  大丈夫、大丈夫。
>  落ち着いて。
> 「耕一……」
> 「ん?」
> 	「す、すけきよ」
> 	「え?」
> 「ううっ……」
>  泣き顔を人に見られるのがいやで、がっくりとうつむいている。
>  公園のベンチに、ぺたん、と腰かけたあたし。
>  ちくしょう、いつだってそうだ! いつだってあたしは、大事なときにきちんと言わな
> きゃならないことが言えなくて……。
>  噛んだ……
>  一番大事なところで、
>  あたしの気持ちすべてがこもったひとつの言葉で、
>  思いっきり、噛んだ……
> 「なんだよ”すけきよ”てーーーーーっ!」
>  ああっ、もう! あたしのバカ!
>  その場さえ逃げられればどうでもいいと思って、無我夢中で駆け出してしまった。
>  耕一、なんて思っただろう……。
>  変な奴って思っただろうな。
>  やっと素直になれる。
>  やっと二人、今までと違った関係になれる。
>  やっと……あたしは耕一の『弟分』から、何か違うものになれると思ったのに……。
>  耕一……。

長いよハゲ

参考:2003/02/09(日)11時01分02秒