> 2003/02/09 (日) 11:01:26 ◆ ▼ ◇ [mirai]> 「……んっ」
> なにかを言おうとしたけど、耕一は唇を離さなかった。
> あたしはゆっくりと瞼を閉じ、耕一に身を任せた。
> 庭の方から吹き込んだ爽やかな秋の風が、あたしの髪をサラサラとなびかせた。
> 雲ひとつない青空から、眩い陽射しが射している。
> 今日もまた、暑くなりそうだ。
> 真っ白な光に包まれながら、あたしは耕一の唇を感じ続けた。
> そ……っと、唇を離す。
> 真剣で、それでいてやさしい耕一の顔。
> 何か言わなきゃ。
> そうだ。そうだよ。
> あたし、耕一にまだきちんと自分の気持ち、言ってない。
> もてあました感情をぶつけるばっかりで……昨日だって、言いたいこともろくにいえな
> いうちに……。
> ううっ、顔が、顔が赤……。
> そうだ、きちんと言おう。
> 耕一にあたしの気持ちを伝えよう。
> もうそんなことはお互い良く分かってるんだけど、これ以上やたらに言い合うことでも
> ないのかもしれないけれど。
> これは、あたしの決意表明。
> あたしと耕一の、新しい関係。今までと違う、もう一歩進んだ二人のかたちのために。
> 小さな声でもいい、聞こえればいいから、
> ちゃんと言おう……『耕一、好きよ』って。
> うー! いざとなると駄目だなあ! 昨日はあんなに夢中になっていってたのに……あ
> あなっちゃうといくらでもいえるんだけど、こう、昼間の光の下で、面と向き合って言う
> となると恥ずかしいな……。
> あー、でも言うぞ! 言うの!
> すうっと深呼吸して。
> ごくり。喉の動く感触。
> 『耕一、好きよ』
> それだけのこと。言えないはずがない。
> 『耕一、好きよ』
> その言葉を心に思い浮かべるだけで、鼓動がはねあがる。
> ああっもう、あたしの心臓! すこし落ち着け!
> 『耕一、好きよ』
> 大丈夫、大丈夫。
> 落ち着いて。
> 「耕一……」
> 「ん?」
> 「す、すけきよ」
> 「え?」
> 「ううっ……」
> 泣き顔を人に見られるのがいやで、がっくりとうつむいている。
> 公園のベンチに、ぺたん、と腰かけたあたし。
> ちくしょう、いつだってそうだ! いつだってあたしは、大事なときにきちんと言わな
> きゃならないことが言えなくて……。
> 噛んだ……
> 一番大事なところで、
> あたしの気持ちすべてがこもったひとつの言葉で、
> 思いっきり、噛んだ……
> 「なんだよ”すけきよ”てーーーーーっ!」
> ああっ、もう! あたしのバカ!
> その場さえ逃げられればどうでもいいと思って、無我夢中で駆け出してしまった。
> 耕一、なんて思っただろう……。
> 変な奴って思っただろうな。
> やっと素直になれる。
> やっと二人、今までと違った関係になれる。
> やっと……あたしは耕一の『弟分』から、何か違うものになれると思ったのに……。
> 耕一……。
長いよハゲ
参考:2003/02/09(日)11時01分02秒