2003/03/03 (月) 05:17:15 ◆ ▼ ◇ [mirai] 初音ちゃんと遊ぶことにしたはいいが、トランプのゲーム内容で紛糾していた。
うーむ、俺バクチ関係しか知らないしなあ。
「神経衰弱!」
「あっ、それいいな! それなら二人でも、そこそこ盛り上がるか」
「うん、じゃあ、やろう」
初音ちゃんはにっこりと微笑んだ。
「よっしゃ! んじゃ、二人でいっちょ、神経を衰弱させっとすっか!」
「……」
初音ちゃんは、なんだか複雑な顔をした。
ニヤリと笑ったように見えたのはきっと気のせいだろう。
「じゃ、わたしからね」
こういうのは先手が不利だ。初音ちゃんはそれを見越してか、わざわざ自分から先手を
買って出た。
ううっ、つくづくいい子だぜ。
「えへへ、やっぱりだめだね」
めくって出たのはハートの3とダイヤの6。次は俺だ。
適当でいいよな。まずはある程度オープンにしないと進まないし。
一枚目はスペードの2。
そんで二枚目。
俺は目を疑った。
札に書かれていたのは人物画。
キングとかクイーンとかジャックとか、そんなハイカラなもんじゃない。
僧侶。
純和風。
なぜに!?
「お兄ちゃんボウズー」
蝉丸のかかれた札を持ったまま固まった俺を置き去りに、初音ちゃんがあとを続ける。
「えっと、これでどうかな?
あ! わあい、中納言ゲットだぜ」
中納言?
いつのまにやら百人一首が混入していたらしい。
しかもゲーム内容が坊主めくりに移行しているのか!?
「つぎお兄ちゃんだよ、ねえ早く早く!」
とりあえずめくる。
あ、M:TGのセラエンジェル?
おお、野村義男のキラカード!?
「すごいよお兄ちゃん、野村だよ! 激ヤバ二枚買い必至の超レアものだよ」
……そうなのか?
つうか、もらっていいんですか? この組み合わせ。
たしか最初並べたときはトランプのカードしかなかったと思うんだが……。
すべてが謎のままゲームは進行する。
「ぐはあっ、志保15枚目」
いちじるしい精神疲労で俺はもうボロボロだ。
いかん……このままでは本当に神経が衰弱してしまう……。
そんな俺に追い討ちをかけるかのように、初音ちゃんがなにか四角いものを渡す。
「はい、じゃあお兄ちゃんダイス振って」
ダイスと来たか!?
……まあいい、受けて立とうじゃないか。
なんかバクチっぽい雰囲気になってきたしな。
これならいける! こういうのなら俺の独断場だ。
ん~ダイスの神様、たのむっス。うりゃ!
出目は?
「3と2で5だね。あ、お兄ちゃんGO TO JAILだよ」
「そういうことだ、柏木耕一」
圧倒的な殺気。この気は……同族?
そこにいたのは柳川だった。
「てめえ何しに来やがった!」
とたんに俺の手にはめられる手錠。
「お前を逮捕する」
「おい待て! 俺が何をした? 初音ちゃん、これは一体」
「ううっ、お兄ちゃん、しっかりお勤めしてきてね」
ハンカチで目頭を押さえる。
待ってくれ、この状況に何にも疑問を感じないのか?
よく分からんうちに連行されてしまった。
長瀬刑事はあいかわらず飄々としていて、カツ丼なんぞすすめてくれたりする。
「そりゃ災難だったねえ」
取調室で俺は涙ながらに無実を訴えた。
無実もくそも俺は何にもしていない。ただ初音ちゃんとカードゲームにいそしんでただ
けじゃないか。
何のゲームか不明だったが。
「どれ、手札見せてごらん」
言われるままに見せる。抵抗してもしょうがないし。
「お、JAIL FREEあるじゃないか。耕一君ラッキーだねえ」
がちゃーん。
「もう戻ってくるんじゃないぞ」
長瀬刑事の声に見送られて警察を出た。
何で出れたのやら……。