2003/03/03 (月) 05:17:15        [mirai]
 初音ちゃんと遊ぶことにしたはいいが、トランプのゲーム内容で紛糾していた。
 うーむ、俺バクチ関係しか知らないしなあ。

「神経衰弱!」
「あっ、それいいな! それなら二人でも、そこそこ盛り上がるか」
「うん、じゃあ、やろう」
 初音ちゃんはにっこりと微笑んだ。
「よっしゃ! んじゃ、二人でいっちょ、神経を衰弱させっとすっか!」
「……」
 初音ちゃんは、なんだか複雑な顔をした。
 ニヤリと笑ったように見えたのはきっと気のせいだろう。


「じゃ、わたしからね」
 こういうのは先手が不利だ。初音ちゃんはそれを見越してか、わざわざ自分から先手を
買って出た。
 ううっ、つくづくいい子だぜ。
「えへへ、やっぱりだめだね」
 めくって出たのはハートの3とダイヤの6。次は俺だ。
 適当でいいよな。まずはある程度オープンにしないと進まないし。
 一枚目はスペードの2。
 そんで二枚目。

 俺は目を疑った。
 札に書かれていたのは人物画。
 キングとかクイーンとかジャックとか、そんなハイカラなもんじゃない。

 僧侶。
 純和風。
 なぜに!?

「お兄ちゃんボウズー」
 蝉丸のかかれた札を持ったまま固まった俺を置き去りに、初音ちゃんがあとを続ける。

「えっと、これでどうかな?
 あ! わあい、中納言ゲットだぜ」

 中納言?
 いつのまにやら百人一首が混入していたらしい。
 しかもゲーム内容が坊主めくりに移行しているのか!?
「つぎお兄ちゃんだよ、ねえ早く早く!」
 とりあえずめくる。

 あ、M:TGのセラエンジェル?
 おお、野村義男のキラカード!?

「すごいよお兄ちゃん、野村だよ! 激ヤバ二枚買い必至の超レアものだよ」

 ……そうなのか?
 つうか、もらっていいんですか? この組み合わせ。
 たしか最初並べたときはトランプのカードしかなかったと思うんだが……。


 すべてが謎のままゲームは進行する。
「ぐはあっ、志保15枚目」
 いちじるしい精神疲労で俺はもうボロボロだ。
 いかん……このままでは本当に神経が衰弱してしまう……。
 そんな俺に追い討ちをかけるかのように、初音ちゃんがなにか四角いものを渡す。
「はい、じゃあお兄ちゃんダイス振って」
 ダイスと来たか!?
 ……まあいい、受けて立とうじゃないか。
 なんかバクチっぽい雰囲気になってきたしな。
 これならいける! こういうのなら俺の独断場だ。
 
 ん~ダイスの神様、たのむっス。うりゃ!
 出目は?
「3と2で5だね。あ、お兄ちゃんGO TO JAILだよ」
「そういうことだ、柏木耕一」
 圧倒的な殺気。この気は……同族?
 そこにいたのは柳川だった。
「てめえ何しに来やがった!」
 とたんに俺の手にはめられる手錠。
「お前を逮捕する」
「おい待て! 俺が何をした? 初音ちゃん、これは一体」
「ううっ、お兄ちゃん、しっかりお勤めしてきてね」
 ハンカチで目頭を押さえる。
 待ってくれ、この状況に何にも疑問を感じないのか?
 よく分からんうちに連行されてしまった。


 長瀬刑事はあいかわらず飄々としていて、カツ丼なんぞすすめてくれたりする。
「そりゃ災難だったねえ」
 取調室で俺は涙ながらに無実を訴えた。
 無実もくそも俺は何にもしていない。ただ初音ちゃんとカードゲームにいそしんでただ
けじゃないか。
 何のゲームか不明だったが。
「どれ、手札見せてごらん」
 言われるままに見せる。抵抗してもしょうがないし。
「お、JAIL FREEあるじゃないか。耕一君ラッキーだねえ」
 がちゃーん。
「もう戻ってくるんじゃないぞ」
 長瀬刑事の声に見送られて警察を出た。
 何で出れたのやら……。