2003/03/03 (月) 05:17:31 ◆ ▼ ◇ [mirai]「耕一さん、どうなさったんですか?」
千鶴さんいいとこに来た! 実は……。
「まあ」
千鶴さんは心底気の毒そうに俺の手をとった。冷たい手のひら。
手の冷たいひとって心は温かいって言うよなあ。
「よかったら鶴来屋で少し休んで行かれますか?」
俺は一も二もなくうなづいた。
とにかく落ち着いて考える時間が欲しい。
鶴来屋の玄関前で、千鶴さんがふと立ち止まった。
「それじゃあ耕一さん、レンタル料のお支払いをお願いします」
レンタル料?
「えーと、ここホテルになってますから800ドルですね」
千鶴さん、おれ金なんか持ってないよ。
「なんですって……?」
即鬼化。
周囲の気温が三度さがる。屋外なのにすごい冷却力。
「それなら、ここで破産してもらうまでです!
耕一さん、全財産家屋敷もろとも頂きます!」
うっわあああああ!
オレ猛ダッシュ。
さすがに同じ鬼とは言え、男女の差でオレは千鶴さんをどんどん引き離していった。
「あれ、耕一?」
梓、助けてくれ! 千鶴さんに追われてる!
「なんであの千鶴姉に追われるんだよ? はーん、さてはなにかエッチなことしたな?」
そんなん怖くて出来るか!
「んー、分かった分かった。耕一へチャンスをやろう」
梓はオレの前にカードの束を付きつけた。
また何か引くのか?
『チャンスカード 水門へ行く』
「水門だって。行かなきゃだめだよ耕一」
「おう、恩に着るぜ」
鬼の力を体に変化を及ぼさないぎりぎりまで解放して、山のほうへと走る。
しかし山岳ゲリラじゃないんだから山に逃げんでもよさそうなものだが。
「耕一さん!」
楓ちゃん! どうして君がここに?
「会いたかった……」
ひしっとしがみつく楓ちゃん。ううっ、いい子だぜ。
「レンタル料500ドルです」
なにいいいいいーーーーー!?
よく見ると、周りには鶴来屋グループのペンションが三軒建っている。
「逃がしません、耕一さん」
オレの胴体は楓ちゃんにしっかりつかまれている。
俺、破産。
「ごめんなさい耕一さん……耕一さんの持ってるB&Oとリーディング鉄道を入手すれば、
わたしは鉄道王になれるんです……」
俺の手から札を取り上げながら、楓ちゃんが申し訳なさそうに言うのがどこか遠くで聞
こえた。
「強いな、初音ちゃんは。いろんな意味で」
ゲームの名前通り神経をすり減らした俺は、それと同時にギブアップ宣言をした。
もうなんか、何もかもしぼりとられた感じだ。
「なんつーか、すごい力だなー」
「えへへ……」
初音ちゃんは照れながら後ろ頭を掻いた。
「根本的に頭が……ヘンなのかな……」
「そ、そんなことないよー」