2003/03/23 (日) 14:37:39 ◆ ▼ ◇ [mirai]「講道館柔道 井野康生」
「今更説明するまでもなく――――――――――
正真証明のオリンピック金メダリストである」
「シドニーオリンピック――――― 全試合オール一本勝ち」
試合前のインタビューに対し空手の練習はしておらず、
ビデオで何回か見ただけと、のんびりした事を言い出す。
あまりにもトボケすぎたコメントを残し、井野は試合場へ向う。
「ダイジョウブですかあんなので‥‥」
「空手甘く見てません‥‥‥‥‥?」
「イヤ‥‥」
「久しぶりに‥‥‥‥‥」
「背スジが凍った‥‥」
マイクを持って1番近くでインタビューをしていた記者だけが、
トボケた表情の裏に潜む獣性に気がついていた。
対するは、北辰会館 加納武志である。
剃り上げた頭に武骨そうな顔つきをした猛者と言うにふさわしい男だ。
(オイシイ‥‥‥)
(打撃のシロウトだが知名度は絶大!)
(シロウトには絶対に見えぬ技‥)
(後廻し蹴り!!!)
(うん‥)
(ビデオで見たアレ‥)
(後廻し蹴りネ‥‥)
「チェイやッ」
顔面を狙った攻撃は井野にかわされた。そして、ズボンの裾を掴まれていた。
ズボンの裾を引き絞り、足を巻き込んで投げ飛ばす。
すかさず井野は加納の背後を取り、寝技に持ちこもうとする。
井野の口元には不敵な笑みが浮かんだままだ。
「あれ‥」
「アララ‥」
「終わってたンすね」
追撃の寝技に入ろうとしたのだが、最初の投げで全てが終わっていた。
虚ろな目を開いたまま加納の意識は飛んでいる。
『蹴り足を捕っての 一本背負いッッ』
『鋭すぎるぞ 一本背負いッッ』
『触れたら 即 投げッッ』
『そこに打撃のチャンスなど存在しません』
『日本のお家芸 柔道ッッ』
『やはり空手にとって最大の敵でしたァッッ』