彼女は佐々木だった。かつての親友であり、転落事故で死んで羽の 生えた小さな奴(妖精)になってしまったピピ、生前“鈴木魅々代”で あったその少女の最後の出会いから3年の長い月日が経ったその 頃、彼女は高校を卒業し、大学受験で見事合格を果たして学生生 活が始まった。彼女は西洋文学に詳しく文系の文学部として勉強す るこの頃、かつてのことはすっかりまぼろしとして忘れ、人間社会に忙 しくなった彼女。身なりはストレートヘアーのスマートなスカート姿だっ た。彼氏探しとやら恋愛に英会話やいろいろな資格勉強など現実的 な事に忙しくなったそんなある休日のことだった。図書館でヒューマニ ズムや恋愛ものなどを読んでゆっくりと過ごした昼下がり、付きあって いる彼氏と携帯電話の連絡で約束の2時半より10分遅れで会った。