2003/04/02 (水) 02:27:07        [mirai]
「空手ってのはさァ‥‥」
「物ォ壊して見せる術じゃない」
「いかにして―――――――― 効率よく―――」
「人体をブッ壊せるかの――――――」
「"理"そのものなんだよォッッッ」

 会田の考え方は実に合理的だ。
 自分のリスクを減らし、効率よく攻撃し、確実に勝ちを取る。
 スポーツマンであればその考えは正しい。
 だが、相手は今の時代では希少な、真の武士だったのだ。

 会田はフェイントをおり交ぜ、ロングレンジから前蹴りでアゴを狙う。
 効率を考えた必勝の蹴りだった。
 だが、片岡の心には微塵の動揺も無かった。

(壊れ易(やす)い―――――――)
(あんなにも壊れ易いものが―――――――)
(わたしの顎(あご)に向かって―――――――)

 激突ッ!
 片岡が額で迎撃した。
 会田のつま先がぐしゃぐしゃにつぶれ足の指が折れてめちゃめちゃな方向に曲がっている。

 会田が倒れると同時に、片岡は残心の構えをとる。
 だが、なぜかその構えは倒れた会田とは反対側、自分の背後に向けてとられた。
 今まで口をへの字に結んでいた片岡がはじめて口元を緩めた。

(そうか――――)
(相手は一人だった)

 背後へ構えをとったのは、多人数との闘いを想定してのものだった。