> 2001/03/03 (土) 22:44:00 ◆ ▼ ◇ [mirai]> K
> 週末の大通りを 黒猫が歩く
> ご自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と
> その姿から猫は 忌み嫌われていた
> 闇に溶ける その体目掛けて 石を投げられた
> 孤独には慣れていた むしろ望んでいた
> 誰かを思いやる事なんて 煩わしくて
> そんな猫を抱き上げる 若い絵描きの腕
> 「今晩は 素敵なおチビさん 僕らよく似てる」
> 腕の中もがいて 必死で引っ掻いて 孤独という名の逃げ道を
> 走った 走った 生まれて初めての
> 優しさが 温もりが まだ信じられなくて
> どれだけ逃げたって 変わり者は付いて来た
> それから猫は絵描きと 二度目の冬を過ごす
> 絵描きは 友達に名前をやった「黒き幸」”ホーリーナイト”
> 彼のスケッチブックは ほとんど黒ずくめ
> 黒猫も 初めての友達に くっついて甘えたが ある日
> 貧しい生活に 倒れる名付け親 最後の手紙を書くと 彼はこう言った
> 「走って 走って こいつを届けてくれ
> 夢を見て飛び出した僕の 帰りを待つ恋人へ」
> 不吉な黒猫の絵など売れないが それでもアンタは俺だけ描いた
> それ故 アンタは冷たくなった 手紙は確かに受け取った
> 雪の降る山道を 黒猫が走る
> 今は故き親友との約束を その口にくわえて
> 「見ろよ、悪魔の使者だ!」 石を投げる子供
> 何とでも呼ぶがいいさ 俺には 消えない名前があるから
> 「ホーリーナイト」「聖なる夜」と 呼んでくれた
> 優しさも温もりも 全て詰め込んで 呼んでくれた
> 忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
> この日のタメに生まれてきたんだろう どこまでも走るよ
> 彼は辿り着いた 親友の故郷に 恋人の家まで あと数キロだ
> 走った 転んだ すでに満身創痍だ
> 立ち上がる間もなく 襲い来る 罵声と暴力
> 負けるか俺はホーリーナイト 千切れそうな手足を
> 引き摺り なお走った 見つけた! この家だ!
> 手紙を読んだ恋人は もう動かない猫の名に
> アルファベット1つ 加えて庭に埋めてやった
> 聖なる騎士を埋めてやった
はい?
参考:2001/03/03(土)22時42分39秒