2001/03/06 (火) 15:13:16        [mirai]
中野新橋あたりの、誰も待っていない、うす暗いボロアパートに戻り、 
「やれやれ……どっこししょ」とかタメ息をつきながら、 
薄くなった頭からバーガーキングの帽子を外し、縦縞のド派手な 
ユニフォームを脱ぎ捨ててゆく姿……。あまりにも哀しすぎる。 

年相応なサルマタ姿に戻ると、40年間も買い続けている『フロムエー』 
をコンビニ(昔、バイト勤めしたことのある店)の袋から出して眺める。 
「60ぅのジジィのオレに、工事現場の交通整理はつらぃやねぇ……」 
ヤカンがピィピィ鳴りだした。『緑のたぬき』かなにかをズズッと 
すすりながら、魚肉ソーセージを肴に『ワンカップ白鶴』を1杯やる。 

22時41分、テレビで久米宏二が「もぉ、横綱も冗談ばかり。クククッ……」 
とかウケている声を聞きながら、ふと見上げると、 
ハンガーから吊り下がった、齢(トシ)不相応に派手なユニフォーム。 
「げふっ。はぁ~、もぉ寝っがな……」 
誰も聞いてくれる人がいないセリフをまたこぼしながら、 
傍らにふたつ折りにしていた、せんべい布団を拡げ、寝っころがる。 

酒の力を借りて寂しい現実を忘れようと、老爺は眠りの世界へ落ちる。 
……夢のクニでは、俺は“夢”を成功させたシンガーさ。 
吉祥寺駅前でギターをかき鳴らしていた35年前、 
レコード会社のプロデューサーが拾ってくれたんだ。 
……ん? えっ? あれっ? やっぱり夢かぁ。プロデューサーの 
顔をよく見れば、バイト先の店長(28歳年下)じゃねぇか。 
やっぱり俺の現実なんてあのボーヤに使われるだけなんだよな。へへっ…… 
せめて、夢のなかでぐらい“みじめさ”ってもんを忘れさせてくれよ。