2003/06/09 (月) 17:02:01        [mirai]
昔の話。
闇金融の仕事をしていたある年の夏の話。 

ある家に、追い込みをかけに行った。

親はとっくに消えてた。子供2人を残して。 
5歳の男の子と、3歳の女の子。
いっしょにいた兄さんよりは、顔が怖くなかったようで 
俺はすぐに下の子になつかれた。 
ぼろぼろの服。風呂にも入ってない。
「親はいつ消えた?」と聞いても答えない。 
「何食べてた?」って聞いたら、上の子は泣きだした。 
下の子は「こっち…」と、俺の手を引いて、家の裏に連れていった。 
破れた金網を通り、出たところは小学校の裏庭。 
「あのね、これ食べたの」って池を見る。 

嫌な予感はしてた。その池、金魚が泳いでるんだ。 
そういえば家のテーブルに小さいボウルと茶碗があった。 

「金魚…食ってたのか…?」と聞くと、2人は頷いた。 
滅茶苦茶やるせなくて涙が出た。兄さんも泣いた。 
急いで兄さんは、食べ物と服を買ってきた。 
その後、近くの銭湯へ行き、2人の体を洗ってやった。 

俺達では、どうにも出来ないと考えて施設に連絡を入れた。 
しばらくして施設から迎えが来た。
俺達に「ありがとう」と言い、家を出ていった。 

全然ありがとうじゃねえ。
俺たちがお前らの親を追いつめた。 
せめてもの救いは、あの2人の親がちゃんと出てきた事だ。