2003/06/09 (月) 17:02:18        [mirai]
理不尽さに耐えられず、足洗うことにした。
その決意をしたのは、ある老夫婦に追い込みかけた時。 

おんぼろ安アパートに住む老夫婦。
いつもの通り、俺と兄さん達で行った。
 孫ぐらいの俺達に土下座して泣く老夫婦。 
「すいません、すいません」と。 

さすがに黙ってられなかった。
兄さんに何されるか分からないが、助けたくなった。 
この爺さん婆さん見捨てたら、俺は本当に非情になってしまう。
 
俺も向いてないんだろうけど、兄さんもこの仕事に向いてなくて。
顔が怖いことと、両親がこの世にいなかったことで、
流れ流れて、この稼業に就いた人。
爺さん婆さんに飯を食わせながら、兄さんと逃がす話をした。 

爺さんは、見るからに人の良さそうで。
騙されやすそうな感じで。案の定騙されて借金が残った。 
婆さんと2人、八百屋から屑野菜を貰いしのいでいた生活。 
働くことも出来ず、年金もわずか。所持金は30円だった。
 
俺より兄さんが同情し、段取りは全て兄さんがやった。 
その為の金。その後どうするかも全部。 
兄さんは2人を連れて、一緒に消えた。 
事務所も、老夫婦だからと追跡はしなかった。
そして俺も足を洗うことにした。

1ヶ月ほどして、俺が足抜けしたのを何処かで聞いたのか、
あの兄さんから連絡が来た。老夫婦と一緒に暮らしていた。 
他人を救った兄さんを凄いと言ったが、
兄さんは、爺さん婆さんに救われたと言った。
「婆さんの料理は美味ぇぞ」とも。
 
ヘラヘラした若い奴ら。
裁判所へ行きゃどうにかなるだろと思う奴ら。 
確信犯で借りる奴らは、上手く立ち回って逃げる。 
死ぬのは、いつだって騙された者ばかりだ。 

悔しいな。 
どうにも出来ないからそう思うのかな