2003/06/09 (月) 17:02:18 ◆ ▼ ◇ [mirai]理不尽さに耐えられず、足洗うことにした。
その決意をしたのは、ある老夫婦に追い込みかけた時。
おんぼろ安アパートに住む老夫婦。
いつもの通り、俺と兄さん達で行った。
孫ぐらいの俺達に土下座して泣く老夫婦。
「すいません、すいません」と。
さすがに黙ってられなかった。
兄さんに何されるか分からないが、助けたくなった。
この爺さん婆さん見捨てたら、俺は本当に非情になってしまう。
俺も向いてないんだろうけど、兄さんもこの仕事に向いてなくて。
顔が怖いことと、両親がこの世にいなかったことで、
流れ流れて、この稼業に就いた人。
爺さん婆さんに飯を食わせながら、兄さんと逃がす話をした。
爺さんは、見るからに人の良さそうで。
騙されやすそうな感じで。案の定騙されて借金が残った。
婆さんと2人、八百屋から屑野菜を貰いしのいでいた生活。
働くことも出来ず、年金もわずか。所持金は30円だった。
俺より兄さんが同情し、段取りは全て兄さんがやった。
その為の金。その後どうするかも全部。
兄さんは2人を連れて、一緒に消えた。
事務所も、老夫婦だからと追跡はしなかった。
そして俺も足を洗うことにした。
1ヶ月ほどして、俺が足抜けしたのを何処かで聞いたのか、
あの兄さんから連絡が来た。老夫婦と一緒に暮らしていた。
他人を救った兄さんを凄いと言ったが、
兄さんは、爺さん婆さんに救われたと言った。
「婆さんの料理は美味ぇぞ」とも。
ヘラヘラした若い奴ら。
裁判所へ行きゃどうにかなるだろと思う奴ら。
確信犯で借りる奴らは、上手く立ち回って逃げる。
死ぬのは、いつだって騙された者ばかりだ。
悔しいな。
どうにも出来ないからそう思うのかな