何かこれに近いイヤなものを昔見た気がしたが、それは猪木対グレート・アントニ オだった。その日の雨(というか宮迫)は猪木であり、「ヨゴレ芸人(江頭=グレ ート・アントニオ)と同じリングに上がって試合するからには、まずは自分と同列 だと思わせてはならない」という意志が働いていたのではないかと予測する。ここ で下手にバンプを取ると自分の格が下がると判断し、潰しに行ったのではないか と。ただそこで問題なのは、猪木対アントニオの一方的シュートマッチ同様、客が 引くほど気まずい空間を作りだしたが故に、結果的に雨のトーク能力の無さを逆説 的に露呈したということ。猪木の芸は狂人の突発的な思いつきの数珠繋ぎだからこ そ神々しくも映るが、雨上がりは普段からそんな狂芸スタイルではない(むしろス タイル上では江頭の方が猪木的だといえる)し、もちろんお笑い芸人はプロレスラ ーではないので強さや格を見せるよりも笑わせなければ視聴者は負けと見なす。こ の日は雨上がりはもちろん製作スタッフまでも大きな勘違いをしていたように思 う。