2003/07/26 (土) 01:47:28        [mirai]
泣いているのかと思った。
でも、ただ顔を伏せているだけだった。
…その姿を見て知る。
この女も、いつからか不安の中にいたのだ。
空が告げた悲しみの予感に、彼女も気づいていたのだろうか。
あるいは、あのふたりよりも先に気づいていたのかもしれない。
いつだって、僕といるときは、寂しい顔をしていたからだ。
「な…」
「もう、うち怯えたない…」
「もう、こんな不安な気持ちのまんま、生きてたない…」
「あの子にプレゼントあげて、喜ぶ顔見てたい」
「あの子が苦しんでたら、そばにいて、励ましてやりたい…」
「せやから決めた」
「あの子、うちの子にする」
「それで、もう安心して生きる」
「あの子と生きるんや、うち…」
「橘の家に行ったる」
「乗り込んでいって、談判してきたる…」
「あの子を、もう誰にも奪われへん子にするまで…何日でも居座ったる…」
「な…」
「それで、ええやろ…」
「それが、うちらしいやんな」
「………」
再び目を閉じる。
もう、女の顔は不安な表情ではなかった。
ただ、休息をとるためだけの寝顔だった。